マスター☆ロッド げいんざあげいん

第四話:徹君とローラ姫(2)


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  マスターソードを頭から生やしながら元気に立ち上がる徹を見上げながら、ローラは呟く。今だ快感の余韻が収まらぬようで、彼女は体をぴくんと時折震わせる。

「――はぁ、はぁ……、な、なんでその状態で生きていますの? いえ、そもそもなんで私に支配されないのです。たしかに、――あの時確かに、私わたくしは聞きましたのに」

 ――ばきん

 という概念権限の書き換え音。

「あー、俺のお腹ぶっ刺した時? 確かにしたねぇ」

 お腹の傷を擦りながら徹は返事を返す。

 だったら、何故、というローラの問は徹の支配者要求に遮られる。

【支配者要求:記点回帰(ルーラーリクエスト)>徹】

 宣言を終えたとたん、徹に付けられた傷がみるみる元に戻り、消えた。それが意味することは一つである。彼の支配者権限は消えていない。そう、上書きされたのは――。

「そう、上書きされたのはローラちゃんの方だよ、残念だったねー?」

 ローラにとって受け入れたくない事実が徹の口からもたらされる。徹の言うことをローラは理解出来る。目の前の現実が全てを証明しているから。だがローラは納得ができない。概念武器同士がぶつかって権限を奪われるのならばわかる。だが今回のケースは刃を以って切り込むというマスターソードが優先される支配方法を行なっておきながらも、一方的に権限を奪われるという理不尽な結果は、ローラにとって絶対に納得出来ないものであった。

「――なぜ、ですの……」
「うーん、あんまり言いたくないんだけどな―? ローラちゃん、残念だけど、俺からみたらさ、君まだひよっ子なんだよ」

 それはローラにとって全くの意外な返答であった。彼女はマスターソードを手に入れてから、剣の声に従い、人を切り続け支配してきた。一年間、休まずずっとである。株分けも一つできた。このダンジョンが出来たのはローラが知る限りたった数ヶ月前のはずである。そのマスターの目の前の男が、自分をひよっ子というのだ。

「――お、お話になりませんわ、私は――」
「俺はね、五年前、いや六年だったかな―。ここよりずっと下層でマスターロッドを手に入れたんだ」

 え、とカイルやシンシア達からも声が上がる。

「あれ、話してなかったっけ。まあいいや、それでさ、最初の部屋の外は全部土なの。笑っちゃうよね。真っ暗でさ、何もないんだ。んでね、マスターロッドがあるからさくさく掘れるわけなんだけどさ、やっぱ体は生身なわけじゃない? やっぱ直ぐへとへとに疲れちゃんだよね。そのころは概念を連発するほどの甲斐性もなくてさー。だから手っ取り早くさ」

 そこまで徹が話した所で、ローラは思わずごくりと唾をのむ。
 そう、聡い彼女は理解ってしまったのだ。
 だから、彼女は後ずさる。

 ――腹を割いたぐらいでは死なないわけである。
 ――脳天に剣を突き刺しても死なない訳である。

   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ――たかだか一年研鑽した概念武器などの歯が立つ道理がない。

 ローラは心のなかで思う。侵攻なんてとんでもなかったと、自分の目の前にいる男は間違いなく気が狂っている。

 そんな様子を見て徹はニンマリと笑う。

「あれ? 解っちゃった? いいなあ、頭のいい子は大好きだよぉ?」

 そういって徹は後ずさるローラの前にしゃがみ込む。
 ぴちゃぴちゃとローラの周りに広がる愛液と尿の水たまりに踏み込みながら。

 ちょろ、と音が聞こえた。

「――およ?」

 ローラの下腹部、から、再び水の音が滴る。
 徹がドレスのスカートをつまみ上げれば、

「――んっ、――あぁ」

 ちょろろ、しょろろろろ、と。

 温かい小水が、漏れだしていた。

「おほっ」

 と、その光景に股間を固くした時。
 勢い良く徹の脳天に刺さったままのマスターソードが引き抜かれる。
 ローラは思う。

 ――勝負には負けた。
 ――力の差は見せられた。
 ――醜態も晒した。

 ――だけど、己の矜持だけは渡さない、と。

 マスターソードの刃先を、自らの体に。この男に勝つためには、――少なくともこの男と同じ事をしなくては勝ち目がない。

「――でもね、それは無理なんだよ」

【支配者要求:座標遷移(ルーラーリクエスト)>支配の剣】

 徹の宣言と同時に一瞬にして、徹の右手に移動する支配の剣。
 自ら放尿してまで作ったチャンスが無へ帰る。

「でも、気に入った。ローラちゃん、すごいね。今君は自殺しようとしたんじゃない。自分を、支配しようとしたんだろう?」

「そうよ、貴方もしたんでしょう? 六年前に。 ――貴方は自らを掘り砕いた」

 強がりながらも、ローラは戦慄する。徹が行なったのは自分の体の概念化。それが狂人の所業でなくてなんのだと。マスターロッドは自身を以って掘った空間を支配する。きっとこの男は正気で行なったのだ。自らの手を、足を、体を、頭を――。粉々に一度砕ききってからの再生を。誰がその方法があるからといって実行に移すのか、いや、そもそも、そんな方法をどういう思考回路をしていたら思いつくのかと。

 ここまでだと、ローラは覚悟をする。
 自分は化物の巣へと飛び込んでしまったのだ。

「はぁ、負けましたわ。打つ手はありません。殺すなら一思いにお願いしますわ」

 そんなローラの敗北宣言を、

「きたきたきたああああッス。姫様!! 年貢の納め時っすよー? 今まで良くも椅子やテーブル代わりにしてくれたっスね!! 今こそ自分、復讐の時っす。さっきの約束通りエロエロタイムの始まりッス!! さあ、その綺麗なお口も胸もアソコもお尻もねっちょねっちょに犯してやるッスよおおおおおおおお!! あ、徹様、今ここ自分の概念空間なんで、僭越ながら自分が一番槍をもらうっス」

 衣服を投げ捨て、ずんずんと、ローラに近寄るが。

【支配者要求:権限書換(ルーラーリクエスト)>迷宮全域】

「――カイルぅ? お前、さっき俺に言ったこと覚えてんの?」

(下克上、させてもらうっす!!)

 徹とシンシアと、アルテと、カレンの視線が、カイルへと集まる。

「てへッス♪」

 そうぺろっと舌を出したカイルに対して、笑顔の徹はパチン、と指を鳴らした。

「アルテちゃーん?」
「はーい♪」

 と、カイルの後ろからアルテが股間を蹴り上げる。
 身体強化を施した手加減の無い一撃である。

「カレンちゃーん」
「はいはーい♪」

 さらにカレンがヤクザキックでゲシッとみぞおちに蹴りこみ。

「シンシアちゃーん」
「やだ、徹様。ちゃん、だなんて恥ずかしいわー」

 と、シンシアは照れながら重量感在るメイスでフルスイングをする。
 めっこりとカイルの顔面にモーニングスターの先端部分が埋まり、そしてよろめいた先には、

【支配者要求:無限崩落(ルーラーリクエスト)>カイル】

 ぽっかりと、暗い穴が口を開けていた。

「またっすかああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――」

 穴がきゅぽん、と閉じた所で徹はローラへと問いかけた。

「――さて、どうしたい?」
「どうもこうも、私は要求できる立場にはないと思いますわ……」

 ローラの力ない言葉に、徹はそれもそうか、と頷いた。

「よし、それじゃあローラちゃん、俺のチンコしゃぶってよ!!」
「――お断りですの」

 徹の提案に間髪入れずローラは答える。
 今となっては、彼女は自分の意志だけが自分が自由にできるものである。
 例え殺されようとも、辱められようとも、決して自らは屈しない。

「支配者要求で操るならお好きにどうぞですの。――でもお気をつけて、貴方の汚らわしいその物体が、要求が溶けた瞬間にどうなるか保証はしませんですことよ?」

 それは、精一杯の強がりであった。それは短くない時間、人を支配し上に立ってきた者の矜持である。たった十三歳の少女が精一杯見せる健気な強気。それは、とても美しいものだと徹は感じたのだ。

 だから徹は思う。


 ――あ あ 汚 し た い


 支配などは生ぬるい、その高潔な思いを、快感とか白濁とか玩具とかローションとかいろんな物で汚したい。徹が悪魔の笑みを見せる。

「それじゃぁ、ローラちゃん。ゲームをしよう。ローラちゃんが勝てばマスターソードを返して、お城に返してあげる」

 そんな徹の様子を見て、シンシア達は思う。

「――あの子」
「一番見せちゃいけない所を」
「徹様に見せちゃったねー」

 その破格の条件に、ローラは一度迷うが、決意をしてしまうのだ。どのみち死ぬ運命なら足掻いて見ようと。そのことで最悪から少しマシな最悪になるのであれば、今の自分は足掻くべきなのだと。

 ――その先に待ち受ける徹の思惑も知らずに。




【ローラ姫・帰還クエスト】

 そう名付けられたトンネルが突如部屋の壁が現れる。

【ブロックについて】
 ・全十ブロックの構成である
 ・ブロックは二種類・上半身ブロックと下半身ブロックがある
 ・上半身ブロックでは、徹はローラの上半身しか触れることができない
 ・下半身ブロックでは徹はローラの下半身しか触れることができない
 ・上半身ブロックと下半身ブロックは交互に設置されている
 ・ブロックの制限時間は四〇分である。

【ローラの権限について】
 ・ローラは両腕でガードができる権限をもつ
 ・ブロックごとのクエスト開始時に両腕で好きなように体をガードできる
 ・ガードの位置は徹は動かすことができない
 ・ローラはガードを自由に動かすことができる
 ・ただし明らかに大きく動かした場合、五分間は動かすことはできない。
 ・ローラはガード以外の抵抗ができない
 ・ガードは両腕のみである
 ・姿勢は自由だが、抵抗はできない

【徹の権限について】
 ・徹はローラの腕を動かすことができない
 ・徹はローラの服を脱がすことはできない
 ・徹はクエスト中、クエスト進行に係る概念以外のあらゆる概念能力を使えない

【衣装について】
 ・ローラはブロックの最初に衣装について選択できる

【報酬について】
 ・ローラが勝利した場合、城への帰還とマスターソードが徹から返還される
 ・この報酬を違えた場合、マスターロッドは自壊し、徹の概念能力は全て奪われる

【勝利条件】
 ・ブロックごとにローラの絶頂が十回を超えなければ勝利となる。超えた場合徹の勝利となる。
 ・また勝利したブロックの個数により、最終的な勝利者が決定される。

「まあ、なんだ。要約すると、ローラちゃんの体にいたずらしちゃうから、両手で防いでね、ってことかなぁ、うへへへへ」

 徹の視線が、ローラの体を舐めまわす。

「――はぁ、勇者様が、貴方は頭がいいけどお馬鹿って言っていた意味が解りましたわ……」

 どの道、彼女にとってみればにべもないのだ。

「いいですわ、勝った場合、約束は守ってくださいね?」

 こうして姫様は、悪魔の釣り針にかかる。
 彼女は想像できないであろう。
 無理もない。彼女はまだ十三歳の少女である。

 人間がエロスに利用するのは、決して手足だけでは無いとか、思い当たるはずもないのだ。

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ぬける  
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