マスター☆ロッド げいんざあげいん

第二話:カイル君とシンシアさん(1)


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 どことなく幼さが残る騎士装備の男と、清楚なプリーストの馴れ初めは実に一般的テンプレであった。村に突如生まれた天才少年。その光輝く人生を彼女は一番近くで見て育ってきた。彼の両親が不幸にも盗賊に殺されて、彼女の家に引き取られた彼と幼馴染として、時には姉のように接してきた彼女たちの関係は今、まさに蜜月の時を迎えようとしている。カイル17歳、シンシア21歳。彼らの人生はこのまま順調に行けば、このダンジョンでひとヤマあてたの契機として、もしくはこのダンジョン探索中に二人の仲が進展するイベントがあり、幼馴染以上恋人未満、家族では無いが一番近しい関係という曖昧な関係が崩れ、一線を越えることになるかもしれなかった。

 しかし、このダンジョンに入ってしまったのが運の尽きである。

「あ゛ー、修道服って露出少ないのになんでこんなにえろいのかなー? このケツたまらんなー、おっぱいはそこそこだけど、この腰つきがなんともいえん、指でつんつんしたい、腰からおしりにかけて撫で回したいなぁ……」

 遠視投映ディスプレイの魔法で、徹は舐め回すように彼女の体を見ながら呟いた。そして、どんな声をしてるのかなーと、徹は遠視投映のボリュームを上げた。

『大丈夫? しー姉ぇ、疲れてない?』
『うん、平気、ふふっ』
『な、なにがおかしいのさ』
『ううん、あのカイルに守られているなんて、ちょっと不思議』
『ぼ……お、俺だって強くなったんだ、む、昔とは違うんだからな』
『うん、びっくりした。さっきはありがとう。カイルももう大人なのね……、ちょっぴりドキッとしちゃった』
『……お、おう』
『……ね、だからもっと近くによっていい?』

 彼女の指がカイルの指に絡められ、そしてカイルの腕ごと胸へ抱くように腕を組む。形の良い胸の形がカイルの肘に当たりぷにょんと柔らかく変形する。赤面しつつも憧憬の眼差しを彼女はカイルに向けた。

『わ、しー姉ぇその、あ、当たってるんだけど』

 シンシアの行動にカイルは慌てるが、

『うふふ、イヤなの?』

 と、きゅっと彼女は腕に力を入れる。

『い、嫌じゃないけどさ』

 そう、照れつつも赤面するカイルを嬉しそうにシンシアは見つめながら






「ごっぱぁああああああああああああああああああああああああああ!! なんじゃこのリア充わぁああああああああああああああああああああ!!」

 徹は遠視投映の前で盛大に吐血した。

「な、なんだ。なんなんだ、この威力は……!! テンプレ展開ってレベルじゃねーぞこれ!!人がスライムのオナホ用途について論文書けるぐらい研究している他所で、外の世界ではなんてことが起きていたんだ……」

 口を拭い息を整え、徹は尚もつぶやく。

「おおぅ……、口惜しいのう、口う惜しいのう……、俺も……俺も何かが違っていればあんな人生を!! 光溢れる、王道人生を歩めたのかぁああああああああああああ!!」

 まさに自分が求めていた人生を改めて目の前で展開されることで、徹の精神は痛く傷つき、そしてその精神をズタズタにされた。

「ふは、ふはははは」

 だが、しかしズタボロになった徹の精神構造が化学変化をおこし、自我防御のために正当性を作り出し、新たな心理の鉄塔が建築され、電波理論を撒き散らす。

「逆に考えるんだ。そのおっぱいを!! そのおしりを!! その幼馴染系メガネお姉様を!! むしろ、そこまで育ててくれてアリガトウと!!」

 徹の心のチンポがいきり勃ち、物理的なチンポもいきり勃つ。

「ふははは、カイル君とそのお姉さんよ、君達の愛情を劣情と欲情をもって試してやろう!! 報酬は貴様らの輝かしい未来、チップは主におっぱいとおしりと、――あと色んな何かだ!!」

 その徹の叫ぶ中、遠視投映の中ではシンシアが横道へと入っていく様子が映し出されてきた。






 【覚醒の横道】
 構成:5ブロック
 報酬:抗魔水晶(純度100%)


 【第一ブロック】ノーマル床
 ・入場制限(女性のみ)
 ・入場制限(一人)
 ・退場制限(鉱石と一緒で無ければ退場できない)

 横道の前で、カイルとシンシアは少し迷っていた。それは横道の奥に目当ての物にしては有り余る程の鉱石を見つけたからである。それは光輝く抗魔水晶であった。抗魔水晶はその名の通り魔力に強い耐性を持つ鉱石である。その特性を生かし、マジックアイテムの制御や、対魔防具としての需要が高い。しかし市場に出回っている鉱石の純度は50%がいい所で、それが70%ともなれば家が一件土地付きで買えるほどの価値があった。

「ここ、何か見えない壁がある」
「あら、でも私通れるわよ」

 パントマイムの様にペタペタと見えない壁を触るカイルを横目に、シンシアは手をひらひらさせながら往復させた。

「地下五階の時までに入場制限があるみたいね、カイルが入れなくて私が入れる、でもカイル単独で入れないってところを見ると、女の子しか入れないのかも」

 そして二人は奥に設置されている抗魔結晶をみる。

「罠かな」「罠ね」

 二人は同時に呟いた。入場制限されたエリアに効果な報酬。これは誰がどう見ても怪しさ満点の罠であった。

 しかし、

「でも、このダンジョンって基本モンスターがいないよね、今までだって外から入り込んだ奴しか見たこと無いし」

 とカイルがシンシアに話しかける。

「上の階でも色んな謎解きがあったわね、それでも失敗したら外に放り出されるレベル」

 そして、シンシアがカイルに同意を求めるように頷く。

「試してみよう」「試してみましょう」

 シンシアの全身が、第一ブロックへと侵入する。




 (ふぃぃぃいいいいいいいっしゅ!!)




 その直ぐ下の横道の管理層で、徹は歓喜の声を心の中で上げるのであった。

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