「それではお嬢様、皆様いってらっしゃいませ」
目的地の駐車場へ到着し、車から降りると運転手の淀橋は深々と武智達を見送る。
「ありがと、淀橋。それじゃまた夜にお願いねー? えへへー、さあいこー!!」
佳奈美は武智の手に縋り付くと、はやくはやく、と皆を煽る。その横ではぎこちなく中田と牧村が腕を組むか手を繋ぐか、微妙に迷ってから手を繋ぐ背景で、権野が精一杯の勇気を振り絞ってお願いします、と手を出していた。香がくすくす笑いながら手を取って、こうして六人三組のトリプルデートが始まりを告げたのである。
武智は右手に神田佳奈美のふくよかな胸の感触を堪能しつつ、その服装をみやる。佳奈美は薄手のニットセーターにフレアタイプのミニスカートという年頃の服装であるが、首元どころか胸元が大きく開いており、すれ違う通行人の視線をその胸元と見せブラで独占中だ。彼女連れの男が視線を泳がせて、連れを怒らせている光景も目に入る。さすがの貫禄である。セクシーさではお子様二人と比べると頭どころか胴半分ほど抜け出ていると言わざるを得ない。
中田浩二と手を繋いでいる牧村真樹はというと、清潔な感じのするワンピースで決めてきた。スカートの丈がデート用なのであろう。盛り上がった胸と部活で鍛えたまぶしい太ももは健康的なエロさを醸し出している。まさにフレッシュもぎたてという一品であった。
そしてその二組と明らかに異なり、初な雰囲気を出している権野と歩いている真堂香は、意外にも少々ローライズのデニムホットパンツにタンクトップキャミソールと体のラインをばっちりと出してきた。上に粗めのカーディガンを羽織っているものの、いつものクールな雰囲気そのままに青春のエロさがちらちらと見えるお腹やら首元やら肩やら太ももやら足首やらから猛烈に溢れ出している。
「あ、あの神田先輩。なんかすごく視線を感じるんですけど、やっぱりその似合ってないじゃ……」
おずおずと、上着で前を隠す香に、佳奈美は
「そんなことないよ!! 視線を集めるのは似合っている証拠!だよ!! ゴン君もそう思うよね~☆」
「お、おう。似合ってるぞ。そのすごく、いい」
片言の原住民の様な固さは抜けないが、権野はこうして初デートの彼女の服を褒めるというミッションをクリアしたのだった。
「まー、佳奈美先輩に服を選ばせたらこういう路線になるからな、そこは諦めなさい」
武智はそんなことを言いながら、先輩だって今日も綺麗で可愛いですよ、またぐっとくるブラを選んできましたね、とフォローを忘れない。横目で見ていた中田浩二が、なるほどそういう風に褒めるのかと感心するように、見ていると、少しふくれた牧村がジト目で自分の事を見ているのに気づいてわたわたしていた。
とまあ、そんなこんなでワイワイやっている六人三組ゲートをくぐると、もはやそこは夢の国である。華やかで歓楽な雰囲気と音楽が鳴り響き、ゲートをくぐった園前広場ではこのテーマパークのマスコットである八頭身のゴリマッチョにブーメランパンツを穿かせ、ネズミミとサングラスを付けた屈強なオブジェが武智達を迎えていた。
「きゃー☆ ボッ○ーだー!! かっこいいー、逞しいー、抱かれたーい☆」
と、佳奈美がはしゃぎ、オブジェの横で写真を撮ってと武智にねだる。
「はいはい、しっかし、このテーマパーク、このマスコットでよくもまあ繁盛するもんだ」
と、武智が呟くと
「何をいう、武智。我らが○ッキーは男の方が人気があるんだぞ、あの男らしさ、憧れに尽きる」
と中田が大まじめで言うその横で
「あの上腕二頭筋、すごいなー、私ももうちょっと欲しいんだよねぇ」
「僧帽筋のキレが熱いですよね……」
「ピッチャーの俺としては体幹を見習いたいな、あのポーズの維持結構難しいんだ」
と権野はまだしも牧村と真堂までもがボッ○ートークに花を咲かせている始末である。
「……そうか、俺もまだまだだったんだな」
と武智は呟き、パシャパシャとカメラのシャッター音を押すのであった。
彼らの午前中は佳奈美が用意したプレミアムフリーパスポートの存在で、それは快適なものであった。アトラクションは優先列に並べるし、休憩所やレストランはVIP用の施設が使える。おまけに決裁は全て神田家持ちという実に至れり尽くせりなツアーである。
「いやー、美味しかったね」
「ちょっと金額知るの、怖いですね」
実にお洒落かつドリームな空間で食事を済ませた道すがら、香と真樹は庶民ながらの感想を言い合う。権野と中田はというと今向かっているドリームスカイウェイのアベックシートでどのような立ち振る舞いをするか、お互いに相談し合っているようである。ちなみに佳奈美は十二枚綴りのゴムをひらひらと武智に見せて期待の眼差しを送っている。やる気満々である。
そして、視界が開け巨大なオブジェが一行の前に現れた。巨大な柱と円と線が組み合わさった建築物。敷かれたレールに沿い海側に半円に突きだしたルートに幾つものゴンドラがぶら下がっていた。
「うっわー、すっごーい」
牧村はいつでも何処でも元気である。
「今日はばっちり晴れてるし、眺めは良さそうだな」
そう言って武智はごそごそとバッグの中から高性能のハンディカムを取り出す。
「ほえ、ヒロ君。ハメ取りするの?」
と佳奈美が呟くが、
「いやいやいや、先輩、これアベックルートは一周一時間近くあるんですよ、せっかくだから俺の新聞に景色を載せたいじゃないですか」
「あ、そっちか。まあ大丈夫、別にいいよ」
と、佳奈美は素直に引き下る。
中田や権野はまたかとげんなりしていて、牧村と真堂は興味深そうにこのやり取りを見ていたが、その違和感に気づいたのは武智ただ一人であった。その答えはこのトリプルデートが終わった後に答えが分かるのだが、今この場での影響は皆無に等しい。
――むしろ、影響があるのは、
ドリームスカイウェイのアベックシートの優先列に並ぶ武智達。彼らの番が来るというその直前である。
武智の指輪が怪しく瞬いて、
――ぎぃっ
と軋む様な音が世界に響く。
因果律が捻れ、捻れて、また一回り。
傍目は何も起きなかったが、何かが起きてしまった。
――がちゃん
と三百六十度ずれた理が元の位置に納まり、本来あり得ないはずの事が起き、認知される。
「えー本日は当テーマパーク夢の国ボッ○ーランドへようこそお越しくださいました。そこでGW最終日を記念致しましてご来園の皆様に、限定販売のお知らせがございまーす!!」
その放送が流れた瞬間、権野と神田がピクリと体を震わした。
「みんな大好き、我らがボッ○ーの限定レアグッズ、メカボッキーシリーズの限定販売を、ただいまより開始致します。優先パスをお持ちの皆様も専用枠がございますのでこのチャンスを是非ご利用ください。スタッフと逞しく、繁殖力旺盛なボッ○ー達があなたをお待ちしておりまーす!!」
繰り返し流れる放送を背景に、ぎりりと佳奈美が武智に振り返る。
「ど、どどどどどどうしようヒロ君、ボッ○ーだよ。それも限定メカボッ○ーだよぅ……」
そして横では
「し、ししし真堂、お、弟さんめちゃボッ○ーファンだったよな、確か集めてたよな?」
内心欲しいのはお前だろうと、武智はツッコもうとしたが、そんな野暮なことは言わずに、真堂の様子をみる。ちょっと残念そうだがどこか安心したような、微笑ましい何かを見る表情をしている。中田も心震えている用だがこの際無視する。今日の主役は権野と真堂なのだ。
「あー、おほん。まあ、最初のデートでいきなりお前らが密室で二人きりってのはやっぱハードルが高いと思ってたんだよ。とりあえず、限定版のお土産を香ちゃんの弟さんに取ってこいよトシ。ほら、絶対無敵のスポンサー様がついて行ってくれるってさ」
と、佳奈美の背中を武智はぽん、と叩く。
「う、ううう、かおりん、ごめんね、ごめんねぇ、せっかくの処女卒業チャンスを先延ばしにしちゃってごめんねぇ」
「い、いえ。その実のところ私もちょっと緊張してどうしようか焦ってましたし」
そして真堂香はちらりと権野を見る。
「し、真堂、いいのか? その、いいのか?」
「ふふ、先輩のそんな子供っぽいところ、嫌いじゃ無いですよ。そのかわりちゃんと三つ、取ってきてくださいね?」
と、可愛らしく首を傾げる。
「そうと決まれば走るよゴン君!! 買うのはあたし!! 君はその機動力を生かして限定品を確保しまくるのだー☆!!」
「がってんです、先輩!!」
と、列から飛び出しあっという間に視界の側から消えていく。そして、しっかりと教育された夢の国の従業員が頃合いをはかって武智達に声をかけてきた。武智はこのままじっとしているのはまあ迷惑になるであろうと、真堂と牧村達を促す。
「さて、それじゃ真堂。ちょいと取材の手伝いでも頼もうかな」
「そうですね、手持ちぶさたですし構いませんよ」
と、アベックシートにそそくさと乗り込んだ。
「い、いきましょうか」
「お、おう」
続いてぎこちなく中田浩二と牧村真樹も微妙な空気を漂わせながらも夢の旅の入り口へと入り込む。武智の指輪が、誰にも見とがめられずにただ怪しく光っていた。
まだ、彼らの運命は捻れきっていないのだ。
ゴンドラにのるとナビゲーターの音声が流れ出てくる。ソファの操作の仕方や窓の開け方、緊急時の説明や救命具の使い方などが上昇するまで説明されるようだ。
「わきゃ」
と、可愛らしい香の声に、窓に向けてカメラをセッティングしていた武智が振り返ると、ソファベッドを倒しすぎてバランスを崩し、綺麗な太ももをあらわにしている香がいて、ソファの柔らかさにはまり込んでわたわたと手足をばたつかせている。
「お、シャッターちゃーんす」
ぴろーん、と武智のスマホからでる録画のお知らせが鳴った。
「ちょ、武智先輩なにしてるんですかっ、セクハラですよ!!」
「えー? 俺何もしてなーい、香ちゃんが勝手に可愛くこけてるのが悪いんですー」
「ほんと……、なんというかどうしようもない人ですね……先輩は」
「そう? ほい、スマホあげる。今の動画以外は消さないでね」
のそりと力なく起き上がると香は武智のスマホをぺいっと取り上げ、データを消す。
「どうせ消すなら最初から最初から撮らなければいいと思うんですけど……」
不満げに呟く香。
「いーや、香ちゃん。違うんだよ。俺にとっては撮るって行為が大事なのさ、そして君が撮られたって事実。それが重要。結果なんか俺の人生にとっちゃナンセンスとしか言いようがないね」
「適当なこと言って煙に巻こうとしてますよね?」
との香のツッコミに、真面目トーンで話していた武智の声がぶははとくだけて、
「あ、ばれた? いやぁ香ちゃん。今日スカートじゃなくて良かったね、佳奈美先輩に感謝しないと、ふはは」
実際武智は彼の人生感の真理を語った訳なのだが、別にそれを人に理解させるつもりもないし、共感も求めていない。なのでそんな軽口を叩きながらも武智はいつの間にかカメラ固定を器用に終えて今度はパソコンに繋いでカタカタと何かをやっている。素人目にみてもその作業スピードは速く、よどみなく機械類を設置する様子は武智の玄人ッぷりを香に思わせるのであった。その作業に見とれていた香はふと、呟く。
「なんというか……すごいですね。先輩の新聞アプリ、うちの生徒どころか学校周辺の人でスマホに入れていない人はいないですよ。学校側も告知に使ってますし、本当にこれ、お一人で作られてるんですか」
「まあね、俺のライフワークとスポンサー様の方向性が一致してさ、結構好き勝手にやらせてもらってるよ、おかげでいいところに住まわしてもらってるしね」
その時ゴンドラが、がこんと進行方向を変えた、回転し眼前に海が開け美しい風景と開放感がゴンドラ内に伝播する。
「お待たせ致しました。ドリームスカイウェイクルーズ、開始でございます。アベックルートのクルーズ予定は一時間ほどとなります。どうぞごゆるりと空の旅をおくつろぎください」
アナウンスの終了と共にゴンドラがゆっくりと動き出し側面以外の透過処理された窓に切り替わる。晴天の開放感に加え、凪いでいる海がキラキラと光ってとても美しい。
「おー、都会の海と言えどこれはなかなか」
「そうですね、ちょっと意外でした。すごく綺麗です」
ぼーっと見ている香を横に武智がごそごそと鞄をあさり、ほい、とドリンクを渡す。
「ゲー○レード、飲む? 俺の好みで悪いけど、運動部なら嫌いなわけないよな」
香に手渡されたそれは何故かほどよく冷えていて、丁度飲み頃な温度になっていた。
「……頂きます」
蓋をひねり、ぱきんとプラスチックが折れる音がゴンドラ内に響く、そして香はくんくんと臭いを嗅ぐと。
「媚薬とか、入ってないですよね」
「入れるか!!」
と密封されてたの確認してたでしょと、武智が叫び、冗談です、と笑う真堂香。
こうして和やかに続くと思われたドリームスカイウェイのクルーズ。
事態が急変したのは今より十分後のことである。
「えー、あー、香ちゃん? いや真堂香様?」
武智のうわずった声がゴンドラ内に響く。
「なんですか、今話しかけないでもらえます?」
先ほどの和やかな雰囲気はどこへやら、真堂香の声は険悪そのものである。いや緊張とイラつきがMAX系女子状態というか生理中の佳奈美がこんな感じであった。
「いやさー、なんともさー……」
武智の視線はゴンドラ内部の壁に設置されている小テーブルに置かれたゲー○レードのペットボトルの数である。香サイドのテーブルに、空のペットが三本。
「そら、それだけ飲んじゃさぁ……」
そう、真堂香はゲー○レードが大好物であった。運動部のご褒美粉末、ポ○リ、アク○リ、ゲー○レード。それは運動部が依存する三大粉末飲料。その欲望を真堂香は止められなかったのだ。
「だって、だって、いつもは薄くして飲んでるのに、甘いんです、すっごく甘いんですよ?」
まるで中毒者の様な言い訳である。
武智がやれやれと、ため息を付いていると、
「大体武智先輩がそんなにストックを持っているのが悪いんです、悪意を感じます……」
等と香がのたまい始める。自己嫌悪と尿意の狭間で香の精神が迷い込んだ次元はやっかいなところかもしれないと察した武智は黙って放置することにした。
したのであるが……
さらに十分後。
ソファベッドの上でくてん、と倒れ股間を押さえて、もじもじしている香がそこにいた。
「簡易トイレ、あるらしいよ?」
「ここでしろってことですか、結構です」
そして更に十分後。
限界まであと少しという香が無言でソファの下に取り付けてある簡易トイレが保管されているであろう、キャビネットを開けると、そこには何もないという事態が発生し。
――その時、武智の指輪がぎしりと本日最後のきしみを起こした。
がくん、とゴンドラが揺れ、
「ドリームスカイウェイクルーズをお楽しみ中のお客様、大変申し訳ありません。ただいま、強風により一時的にゴンドラの進行をストップしております。これは、故障ではなく安全基準上の停止で、構造的には問題ございませんのでお客様は安心して空の旅をおくつろぎください。ご質問、お要望などは――」
道中半ばにしてゴンドラが動かないという絶望的な状況が真堂香に突きつけられた。簡易トイレもなく、窓も安全上換気程度しか開かない。だが尿意が限界が迫り来るこの状況で、真堂香は持ち前のクールさをすっぱりと失ってしまった。
「ど、どどどどどうしましょう先輩、だめです、私もう色々だめになりそうでもうダメです!!」
そんな様子を見て、武智は冷静に諭した。いつも香が弟たちを落ち着かせるように。
「大丈夫、香ちゃん、たいした問題じゃないよ」
と、頭をぽんぽんと優しく撫でて、
「俺たちには、簡易トイレが無くてもこのゲー○レードの空きペットがあるじゃないか」
とにっこり笑って香に差し出した。
「大問題すぎるわああああああああああああ!!」
真堂香、人生で初めての全力ツッコミであった。
さっきまでの尿意が怒りが上書きして失せたのか、べしべしと香は武智を叩く。
「なんですか、なんなんですか、武智先輩はなんなんですかもう!!」
「いや、待つんだ香ちゃん、ゲータ○ードのペットボトルは飲み口が大きいからきっと漏にく――」
「問題はそこじゃないですー!! そーこーじゃーなーいーんーでーすー!!」
「色だって黄色いからカムフラージュにも、――いひゃい、いひゃいよ香ちゃん」
ぎりぎりと香が武智のほほをぐいぐいと引っ張る。
――が
怒りで消えていた尿意のぶり返しが来て、香はその場に再びぽてん、と倒れる。
「あー……香ちゃん?」
「……いいんです」
ぶつぶつと、香が呟く。
「もういいんです、私が悪いんです。私はここで無様に粗相して、武智先輩と一緒に職員さんに怒られて、夢の国へ出禁になるんです。もうボッ○ーとも会えないんです」
「いや、まった。ナチュラルに俺まで巻き込むのは良くないぞ香ちゃん」
「だって……でも」
香の言葉が無くなってきた。どうやら限界は近いらしい。が、武智は余裕があった。彼は個人育ちであり、年少の駄々や世話などはお手の物であり、そして語る言葉が無くなってきた香は、だだをいう力もなくなってきたという証拠である。
ならば武智光博、ここはお兄さんモードの発動である。
「よいしょっと」
と、武智は香の体をずるずると引っ張り、ソファーベッドの端まで運び、強引に座らせ、腰のホットパンツに手を掛けた。
「ちょ……先輩? 何を、やめ――」
「だーめ。香ちゃん。香ちゃんが踏ん切り付けられないなら俺がお世話しちゃう。もう決めた」
そして、
「香ちゃんは何もしなくていいから、目でもつぶってな」
パニックな状況に単純な言葉。まるで自分が弟たちに言い聞かせるような、いつも世話にかまけていた香の立場が逆転する言葉が、一瞬だけ彼女の思考を停止させた。
小器用にベルトが外され、ホットパンツが脱がされぽーんとソファベッドの奥に投げられる。
「せんぱ……、やめてくだ、やだ、やだぁ」
「そんな可愛い声だしてもだーめ。すぐ済むからほら、腰あげるっと」
せり上がる尿意と香の羞恥のプライド。頭では拒否し体はリスク回避に腰を上げる。その一瞬で香のショーツは抜き取られ、じっとりとしたゴンドラ内の空気が彼女の股間をざわつかせた。
「おねが……たけちせんぱ……わたし、はずかしぃ……」
両手で顔を覆い、後ろに倒れる香。だが彼女の下半身は丸出しで、そしてその足は開き、股間の縦筋は今かと今かと、ひくついている。
「と、言われましても」
と、武智は小器用に空ペットボトルの蓋を片手で開けて、彼女の股間にちょん、とあてがい、もう片方の手でどさくさ紛れに彼女の皮かむったクリトリスをちょんちょん、とつつく。
「ひぅっ。――あ……、あ……あ、あ、あ、や、あ……やだぁ」
ぴゅ、という吹き出しを皮切りに、とぽとぽと、とぽぽぽぽぽ、じょろろろと、香の股間から小水があふれ出た。
「やだぁ……みないで、先輩見ないでぇ……あぅ…やだぁ、止まって、止まってぇ」
「はーい、香ちゃん我慢」
通常トーンの武智の声に香の下半身がきゅっと反射的に締まり、尿が止まる。素早く武智は二本目に切り替え、
「はい、どうぞ」
と、またどさくさ紛れに今度は人差し指でこりこりと優しくクリトリスを弄んだ。
―その事実は羞恥でいっぱいの当の香には伝わらなかったが。
「ふ、ふぅあああああああああ」
二度目の排泄は香の体に確かな快感を刻みつけてしまった。
武智の指がくにゅくにゅとクリを転がすたびに、何回も香の膣が痙攣し、排泄と分泌を繰り返す。さらさらとした尿意と共に、彼女の割れ目から意識しできないどろどろとした粘液が垂れだしていた。
我慢に我慢をしていたからのか、香の背筋を立ち上る初めての鋭い快感と心地良い尿意から解放が彼女を包み込む。
「ふっ……んっ……あっ、……あっ……あっ……あぅ……あはぁっ……んんっ」
たっぷり500mlのペットボトル一本分とちょっとの尿を香は吐き出し、そしてクリをやさしく揉まれながら、彼女は微睡んでいた。尿を出し切った後も続くこの心地良い快感が何かも分からずに、彼女はぼーっとこの初めての感覚を堪能していた。
実際は武智がタオルやら何やらで余韻に浸っている香の股間をくちゅくちゅしていたのだが彼女はその自身の微睡みから戻る数分間、それは続いた。
この体験は彼女の人生の中で初めて、「お世話」されたことであり、それが彼女の今後を大きく左右してしまうのだが、それはまだ少し先の話である。
そもそも、この話はまだ終わっていないのだ。
――ゴンドラはまだ、動き出さない。