歪曲コミュニケーション

第11話 真堂香⑦


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 ゴンドラの中に充満していた香の排出した臭いも薄れ、安全性のため少ししか開かない窓から、ひんやりとした海風が彼女の股間を撫で上げると同時に、真堂香の意識は覚醒する。

 がばっと起き上がり、香は周囲を見渡す。たっぷりと中身が充填されたペットボトルに、パソコンをカタカタさせながら平常運転の武智。さらにあらわになった下半身と太ももに置かれたスポーツタオルと、

 ――出すものを出し切って楽になった心と体と、丸出しの下半身。

「お? 香ちゃんだいじょう――ぶほ」

 と、香は太もものタオルを武智に向けて勢いよく投げつけた。

「み、みみ見ないでくださいっ。えっち!! 変態!!」

 しかし、武智はそのタオルを顔面で受け止め口でもぐもぐしながら、

「そんな事いわれてもねぇ……もう全部みちゃったし、あ、このタオルで香ちゃんの股間ふきふきしたんだけど、これもらっていいの? ご褒美? 額に入れて家に飾っていい?」

 などと上級者な発言が飛び出し、香は更に顔を真っ赤にして、タオルを取り返しそれで下半身を隠しながらソファーへと座る。そんな彼女の様子を見ながら、武智は不思議そうに声を出した。

「香ちゃん。……服、着ないの?」

 武智の視線はソファベッドの奥側、先ほど武智が駄々をこねる香からむしり取った下着とホットパンツである。取りに行くときにお尻が丸見えになるから、着替えるときにどうしても無防備な姿をさらすから、などの理由が彼の脳裏に浮かぶが、目の前の真堂香の表情は、それらを理由とするには少し行き過ぎた表情と迫力を宿していた。それは、疑念というには強く、むしろ武智の何かを咎めるような敵意を孕んだ表情。

「……武智先輩、撮って……ませんよね?」

 押し黙る武智を前に、香は理由を言葉には出さず、自分の頭の中で反芻する。一つ目はゴンドラに乗って初めてソファに座ったとき、たわむ座面に戸惑いばたばたする自分を躊躇無く、スマホで撮影したこと。そして二つ目はその時と違い、窓の外を写しているとはいえ、資料用のカメラが作動していること。香の知識には無いことだが実際このタイプはスイッチ一つでサブカメラで自撮りが容易にできる。なので向きなど関係なく撮影が出来てしまうはずだ。最後に三つ目、香自身もよく分からないのだが、明らかに自分の中で空白の時間があるのだ。放尿から覚醒までの少しの間、彼女自身が微睡《まどろ》んでいて意識が無い。動画の撮影音やカメラのシャッター音が鳴った気がするが、その根拠も決定付けられない。

 そんな不確定な根拠しか上げられない状況が、真堂香の疑心暗鬼を掻き立ててしまう。

「……やだなぁ、香ちゃん」
「――動かないでください」

 絞り出すような武智の声は、鋭利さを持った真堂の声に遮られる。真堂香の様子は鬼気迫ってる。当然であろう。これはきわどい太もも動画とはレベルが違うのだ。下手をすれば自分の下半身丸出し秘所大公開&放尿画像が、記録に残されているかもしれないのだ。

「ゆっくりと先輩のスマホとその撮影用のカメラを渡してください。そして私がチェックするまで絶対に動かないでください。そうでなければ今すぐ緊急コールか110番通報します」

 と、香が側に置いておいた自分のスマホを手に取り構える。その姿には有無を言わさぬ気迫と切迫した緊張が彼女にはあったが、武智は何の気なしに、ぽいっとスマホを香に放り投げ、

「いいかい、香ちゃん」

 と、前置きをした後に、

「香ちゃんは今ね、俺の踏み込んじゃいけない領域に踏み込んだんだ。でも香ちゃんの気持ちも分かるから、それほど今の俺は怒りに燃えていたり、誤解だと騒ぎ立てる気もないし、香ちゃんの指示にも従うよ。だけど、その前に言っておく」

 ざっくりと、

「俺はね、撮っていることを隠さない。堂々と撮るんだ。それがどんなものでも、悪びれなく、正面から、たとえどんな状況でも、相手も納得尽くでね」

 その透明感を帯びているといってもいいような、冷静かつ淡々と語られた武智の声色は、真堂香の切迫と緊張で作られた感情の仮定方程式を容易に切り裂いた。そしてそれは、更なる発言時間を武智に許すことになる。

「だから、香ちゃん。君が今好きなだけチェックをして、カメラとスマホに納められている映像をみて、納得してくれるなら喜んで協力しよう。だけど、もし何もやましいことが映っていなかったら」

 そういって武智は一瞬思案し、そして口を開く。

「香ちゃんさ、一つ俺に撮られてくれない?」

 結論から言えば、真堂香は武智の発言をここまで許すべきではなかった。彼女はこの武智の発言をはったりやごり押しと判断しているのであるが、そもそもこの問答の焦点はそんな所ではないのだ。身の潔白を表すチェックの筈が、その行為が交換条件にすり替えられてしまう前に、真堂香は行動に出なくてはならなかった。

 なぜならば、真堂香は気づいてはいけないことに気づいてしまうから。

「そ、そんなの詭弁です。武智先輩こそ今私が通報すれば言い逃れが出来ない状況なんですよ?」

 たとえ、今更その理不尽さに彼女が気づいてもだ。

「ん? 別にいいよ? 俺は本当に困らないし、そもそも本当に撮ってないしヤバいとも思っていないし、これは強制じゃ無くてお願いだし? まあ最悪捕まって逮捕されて退学になったとしてもだ。……うーん、その場合は結構香ちゃんにも結構くるものがあると思うよ?」

 武智という人物と会話をすればするほど、彼の異常性と特異性を真堂香は理解してしまう。そしてその理解が、香がこのまま暴走した時に降りかかる現実を唐突に香自身に突きつける。

 警察沙汰という状況、
 放尿を世話された事実、
 調書・事情聴取の手間、
 学校や部活での評判、
 実家への被害、
 権野達への言い分、
 というか既に実家には神田家の影響が、


 そんなことになれば


 弟や家族にこのことも知れ渡り
 クラスメート、友達にも噂は広まり、
 そもそも、今目の前にいる武智光博という男は、神田家と深く繋がりをもち、自分の生活エリア一帯で幅広く読まれているデジタルメディアの発信者であり――

 こうなってしまうと、もはや話しが単純で無くなってしまう。武智にその気は全くないのだが、頭のいい真堂香の中でネガティブな要素が渦を巻き、カメラの中身を見る見ないの話だけではなく、見た後の後始末をどのようにつけるのか。要求を飲めば丸く収まるのかという思考を取らざるを得なくなってしまう。

「どうする?」

 だがしかし普段と変わらない武智の様子が、返って香の背中を押してしまった。全てが闇に包まれた平和な事実より、自らの意思で真実の蓋を開けることを彼女は選んでしまう。

「分かりました、それでいいです。見せてください」
「はい、どうぞ」

 と、武智から差し出されたカメラも受け取り、香はおずおずと中身をチェックを始める。録画された映像は一つ。それを五倍速で再生するがずっと穏やかな海の景色が続いていた。音声は切ってあったようで二人のやり取りも入っていない。スマホの動画履歴も見るが、結局前回香がデータを消した状況と何の変わりも無かった。

「……どう、香ちゃん?」
「何も、映ってません……。その、申し訳ありませんでした」

 本当に何も映っていなかった安心感からか、それとも冤罪を騒ぎ立てた罪悪感からか、香は急にしおらしく、そして素直に武智に頭を下げる。

「いや、別に俺は怒ってないよ。言ったでしょ? 香ちゃんの気持ちも分かるって。それにまあ、なんというかいい眺めだしねぇ」

 香は武智の視線が自分の下半身に移ったことにより、身じろぎをするが、それだけであった。そして、目に涙を溜めながら、姿勢を崩し、

「あの、先輩、私は、私はどうなってもいいので、家族と、その弟達だけは……」

 と、啜り泣いて懇願を始めるのだが、

「ちょ、ちょっとまった。ちょぉおおおおっとまった香ちゃん。なんで? なんでそうなるの?」
「ええぇ……っ、私いまから武智先輩にハメ取りされて処女を失ってその後もこの件で脅されて性的でいやらしくて口にも出せない背徳的なことを延々とされちゃうんですよね、それで玩具みたいに弄ばれた挙げ句に、体を売らされて複数の変態親父に前も後ろも犯されちゃうんですよね、そうなんですよね」
「なんでじゃー!! って、の香ちゃんの中でどんだけ俺は鬼畜野郎でクズ野郎なの? 友達のできたての彼女慰みものにして女衒のまねごととか高校生の所行じゃないでしょー、てか、香ちゃんちょっとその想像えぐくない?Mなの? ドMなの? ドM願望なの?」
「だって……、だって先輩すごい怖くて……」

 真堂香がそういった所で武智は首を傾げ、自分の言動を振り返る。そして吟味し、咀嚼したうえで、ぽん、と手を合わせ。

「ああ、そうか。俺が変なこと言っちゃったからか。そこらへんは安心して欲しい。撮らせて欲しいってのはあくまでもお願いで、ダメならダメで諦める。背景に脅迫とか神田家とかは関係ない。これは俺個人の問題だからね、あと撮った奴はその場で破棄していいし」

 いつもの調子に戻った武智に、真堂香はようやく少し落ち着きを取り戻す。
 そしておずおずと武智を見ながら

「個人の問題って……なんですか」

 そう、質問した。

 武智はあれ、聞いちゃうんだそれ、と少し迷い。
 そして、香ちゃんならまあいいかと、折り合いを付けて、

「俺はね、人のものが大好きで堪らないんだよ」

 武智光博は真堂香を抜けることが出来ない泥沼へ引きずり込むことに決めた。

 それを聞いたとき、真堂香は彼が何を言ってるか分からなかったであろう。ただ、彼の話を聞き終わったとき、それを理解してしまったとき、神田家よりも何よりも、抗えない選択を自分が突きつけられていた事を理解してしまうことになる。

「これは病気と言ってもいい、俺自身がそう自覚している」
「頭のいい香ちゃんなら分かるでしょ、他人の芝生が青いって」
「俺はその感覚が何倍も人より強い」
「でも俺はこの感覚が危ういことを、ちょっと昔に手痛く学んだんだ」
「だからこういった自分自身に折り合いをつける代償行為に励んでるんだよ」

 その行為の結果が西秋中通信という西多摩においては全国紙よりも有名で誰もがしっているという、ローカルアプリにしては飛び抜けて規模が大きいメディアであることを真堂香は察して、――そして恐怖した。

 それほどまでの武智の行動力
 そしてそれを支える精神力

 自分の要求は、武智のその歪んだライフワークを根源的に崩してしまうものであり、だから武智は踏み込んではいけない領域、と自分に警告したのだと。

 そして真堂香は理解する。武智光博という自己実現の化け物に対して対立する立場に身を置くことの恐ろしさと馬鹿らしさを。今は丸く収まっても、彼の桁外れのバイタリティの前に、対立する立場でいれば、今後の自分の学校生活が決していい方向には向かないであろうことを。そして、逆に味方や近しい存在ならば、きっと今日みたいな観覧車に乗る前までのような面白おかしい日々が続くであろうと。

「武智先輩が、変人で変態で、太もも好きってことは分かりましたけど、色々と私も誤解してましたし、その、撮りたいなら」

 やや打算的な理由ではあるが真堂香の心に平穏が戻る。何の事は無い、つまるところ、要はこの場限りで武智のお願いを聞いてあげれば良いわけだ。動画を破棄してもよいと言質も取っている。既に恥ずかしい部分も、恥ずかしい行為も見られている身であるならば、との香の思惑は、

「よーし、それじゃぁ、いけない子にはお尻ぺんぺんだな」

 という武智の発言に脆くも崩れ去る。

「……は? え? ええええっ、ええええぇぇ……!!」
「ぺーん、ぺん。あ、それ、ぺーん、ぺん」

 鼻歌交じりで機材の準備をする武智。景色を撮るために外側を向いていたカメラはいつの間にか内側を向き、ショルダーバーグからとりだされた薄い板がパタパタと広がり外の光を取り込む反射板に成り果てる。温かな陽光が香の下半身に焦点を合わせ、自動的に光源を探知しうぃんうぃんとピントを合わせる。

「え、やだ、先輩、ちょっと、それは……」
「はーい、香ちゃん。スタンバイ。その可愛いお尻をこっちに向けてー? そうそうソファベッドに四つん這いで。あ、タオル邪魔だね、ぽーいっと」

 有無を言わせぬ武智の事の運びに、羞恥や嫌悪、理性や論理が機能する前に、香は唯一の鎧であるスポーツタオルを奪われカメラの前にお尻を突き出してしまう。

 ぴ。

 という録画開始音でようやく香の理性が仕事をし、秘部を隠そうと試みるが、それは香がいままで感じたことの無い感覚により、果たされることは無かった。

「ふぁ」

 突き出されたお尻、丸出しの秘部の綺麗な縦筋を武智の両親指がにちゃぁと開く。ピンク色の薄く潤った花弁と膣穴に向けて、武智の唇と下が、じゅるりと吸い付いた。

 有無を言わせぬ吸引と、執拗に蠢く舌と、巧みにクリの皮を解す指が、香の理性をかき混ぜる。自分の股間から聞いたことも無い音が流れてくるが、そんなものはその部分からせり上がる気持ちがよい何かに打ち消されてしまう。香が認識できる感覚は今自分のクリトリスをこね回されてるぐらいしか分からない。後は全部分からない、なんだかあそこが勝手にひくつくし、お腹の中から熱い何かが滲んで漏れて、体の制御が聞かなくて、ぶるぶると全身が震える度に涙と涎がでてしまう。

「やだぁ……こんなの、おしりぺんぺんじゃないです、せんぱいの嘘つきっ……あっあっあっ♡」
「いんやー、これは大人版のお尻ぺんぺんでお尻ぺろぺろだよー?」
「あっあっ♡ お、おしりでもないじゃないですかぁ……こんなの、こんなのひどい、ひぃ、ひゃぁ♡」

 熱い股間のうずきが突然後ろに移り、そして香は自分の肛門でちゃぷちゃぷ、ちゅくちゅくといういやらしい音が、発生していることを自覚する。

「やっ……なにこれ……あっ、あっ、ふぁぅ……ん♡」

 今まで何人も、いや自分さえも直接触れることなど無かった箇所に、柔らかでねとついた何かが、リズム良く這い回る感覚。それを拒もうと括約筋をきゅっと締めれども、まとわりつく舌の感覚が凝り固まった括約筋の表面を舐める度にその行為さえも快感に変えてしまう。

「ばか……先輩のばかばかばか!! なんかシリアスなこといっても結局えっちなことがしたいんじゃないですかぁっ」
「んー、ひへいはひない(否定はしない)。れろれろ」
「ああん、な、舐めながら、しゃべら…ないで……くだ…さ…あぅぅ♡」

 四つん這いでいる香の腰ががくがくと震える。抱えられるように下半身を押さえられて、菊門を舐られ皺を解され、くちょくちょとふやけてしまうほどに舐められて、さらには両手でクリトリスの皮を丁寧にむかれてこそばゆく弄られて、挙げ句には潤った膣口の入り口を指の先でぐちゃぐちゃにかき混ぜられるのだ。

「……ふっ……んっ……んっ……あぁぁぁ♡」

 体を支える余力を失った香の両手は、体の奥底から出ようとする声を抑えるべく、備え付けのクッションを手繰りよせ、抱くように抱え込むことにより防ごうとするが、年頃の体が発信する刺激は、そんなことではごまかすことは出来ず、今現在進行形でリズミカルに捏ねられ、擦られた彼女の初なクリトリスが、決して彼女の一人遊びでは届くことの無かった次元の快楽の波を生み出そうとしていて。

「……あっ……あっ、やめて、せんぱい、もうやめてください、来ちゃうんです、すごいのきちゃ、あっ、あっ、あぁぁぁぁぁ……♡」

 ぴちゃぴちゃという肛門からの音と別の音がゴンドラ内に響き出す。くっちゃくっちゃと膣の入り口をかき混ぜる音とぴしぴしとクリトリスを弾く指の音に潤いが加わり、それと同時に香の背筋を大きな快感の満ち引きの波がぞわぞわと登り出す。

「あっ……あっあっ、いく…いっちゃう、……すごい、すごいぃ、こんなのわたし、しらな……あぁぁぁぁぁ♡ ふぁぁぁぁぁぁ♡ んぃいい、……く、いきます、いっちゃうぅううう♡ あはぁっ♡」

 ぷちゃぷちゃと鳴き声を上げる香の股間尻だけをだらしなく突き上げて震える下半身にその股間から吹き出す飛沫が武智の顔と胸元をぬらしていく。

「あはぁっ……、はぁっ……はぁっ……、だめ……です、せんぱ……わたし、こんな、なんでこんな……」

 びくん、びくん、と小ぶりなお尻を痙攣させながら、香の股間から白く濁った本気汁がにちゃりと太ももに垂れる。武智はそれをおもむろに指で救うと、未だぱくぱくしている香の肛門にぬちゃりと塗りつけ、

「……え、、え? せんぱい……、何を?」

 と、香が振り返るが全ては遅い。粘度の高い潤滑油を得た武智の人差し指は、ふやけた香の肛門をたやすく侵食していく。

「……あ……、や……だぁ、……あっ、あっ、」

 いつもは排泄すべき穴が外から侵食されるという未知の体験と、下手に動いたら体の中が傷ついてしまわないかという思いから、真堂が身を竦ませ、抵抗を後回しにしたのは正しい判断だったのだろう。

 だが、

 ぬぽん、ぬぽん

 っと、突きだした尻の先で営まれている注挿作業が、真堂香の脳髄に未知の感覚を認識させてしまう隙でもあった。にゅぽにゅぽとスムーズな肛門のピストンが生み出す下半身の痺れと、くにくにと優しく揉まれるクリトリスから生まれ出る快感とが真堂香の中で段々混ざり合う。

「……ふ……あっ……あっ……んっ」

 それはたった数秒の隙間だった。
 武智の経験巧みな指により、リズミカルにご奉仕された前の後ろの穴の刺激が、真堂香の心にとんでもない考えを呼び起こさせてしまう。香はそれを認めたくなくて、

「……せ、先輩。もうやめましょう? 私、誰にも言いませんから、何もなかったことにしますから」

 ぬちぬち、ぬぽぬぽと武智の指は止まらない。

「ほ、本当に……、誓いますから、……う、あ……せ、せんぱ……んっ」

 にゅぽにゅぽ、ちゅくちゅくと、真堂香の下半身が再び蜜を帯びる

「うぅ、……はぁ……はぁ、先輩だめ、私もうだめなんです、こんなの覚えたら……覚えさせ、……られちゃったら……」

 真堂香は家庭の事情で、店の手伝いと弟三人の面倒を見ている。そのせいで彼女自身のプライベートな時間は余り取れないし、自分の部屋でゆっくりとする時間も皆無であった。実際お風呂などは、まだ小学生ある下の弟二人を入れるがてら自分の入浴も済ましてたし、トイレなどは家族六人もいれば落ち着ける場所にはほど遠い。そうなると唯一就寝時や試験勉強前の店の手伝い免除ぐらいなもので、当然オナニー経験など数えるほどしかなく、ストレスが溜ったときに自室で声を殺して軽く致す程度のものであった。

 なので、当然武智の様な他人の指で、あまつさえ両手と舌を使われてまで弄られることなど思慮の外であり、そこから生み出される快感の大きさと感覚などは彼女の人生で初めての事であって、

 尚且つ、今、彼女の肛門から卑猥な音を立ててぬっぽぬっぽぬっぽぬっぽと生えている中指の先端が、彼女の中でこしょこしょされる度に訪れる感覚が、これほど良いなど、これほど心の中で耐えがたい甘い糸を引く甘美なものだと、知るよしもなかったのである。

「先輩、……お願い、お願いします……っ……あっ、あっ、あっ、そ、そこ、……だめぇ♡」

 だからその口とは裏腹に、真堂香は突きだした尻を引っ込めないのだ。引っ込めたくないと言ってもいい。今行われている行為は非常識である。理不尽である。間違いなく強要で、しかも冒涜的だ。

 でも、気持ちが良いのだ。

 真堂香は今、経緯は碌でもないが、これまで生きてきた中で最大にして最高の快楽を味わっている。自分の尻に突っ込まれた武智の中指が動く度に、股間の肉芽と蜜壺は狂ったように潤いと快感を吐き出している。

 真堂香は考えてしまった。こんな事が今後の自分の生活で起こりえるだろうか。別にプライベートが無い今の生活が、嫌なわけでも弟達が煩わしい分けでもなく、愛情か好意かまだ整理が出来ていないものの、権野という存在に対する今の気持ちは変わらない。

 でもそれらは、決してこの快楽には届かない。
 それだけは確信できてしまう。
 この武智という男の奉仕は、得がたいものなのだと、本能的に理解できる。

 先ほどから、ちらちらと自分の股間越しに映る武智の顔。上半分は見えないが、その薄くつり上がった口元。真堂香はそこに病的なまでの狂気を感じてしまう。

『俺はね、人のものが大好きで堪らないんだよ』

 あの発言が武智という男の本心であることを真堂香はようやく思い知る。そして、思いついてしまう。この考えに、禁断の考えに至ってしまう。

 自分が、権野忠敏の彼女という存在である限り、武智光博という男はずっと、ずっと自分に劣情を抱かずにはいられないということを。そして、その劣情を昇華させるためならば、彼の持ち前の行動力と、その人脈で、自分との関係を秘匿し続けるであろうことに。

 立て続けに彼女の脳に送られてくる快楽信号は、そんな碌でもない背徳的な思考を真堂香に与えてしまった。

「あぁぁぁ♡ ……あぁぁぁぁ♡ せんぱい、いく…いっちゃう、いっちゃう……んぃぃぃっ♡」

 ちゅっちゅく、ちゅっちゅく。ゴンドラに内に響き渡る快楽の歌。

「あはぁっ♡」

 生まれたての子馬の様に下半身をぷるぷるさせながら、真堂香の下半身は本日二回目の潮をはしたなく噴き出した。体の中に溜った快感を、全力でいきんで放り出すという彼女の今までの人生にあるまじき行為は、武智光博という存在を免罪符として真堂香の中でたった今肯定されてしまったのだ。

 体いっぱいに痺れる快感を感じた真堂香は、四つん這いの姿勢を崩し、こてんと柔らかなソファベッドに仰向けに寝転がる。開ききった股間を武智が慰めるように舌で愛撫を始めて、その舌は、段々とお腹へと這い上がり、小器用に香のチューブトップのインナーを脱がせ、まろびでた小高い双丘の先端をちゅば、ちゅば、と吸い上げると、そのまま真堂香の首筋にまで這い上がり、

 その、ピンクの唇に触れようとしたところで、真堂香の手が武智を遮る。武智は一瞬残念な顔をするが、真堂香がおもむろにトレードマークのポニーテールを外し、髪を解く。そしてまるで、髪を解いた自分は真堂香じゃありません、と言わんばかりの顔で武智を見て。

 一度目のキスで二人の唇が軽く重なり、
 二度目のキスで武智の舌で香の唇がこじ開けられ、
 三度目のキスで大いにこね回される舌の感触の中、

 再び股間で動き出した武智の指により、香の足先がぴんと伸びる。

「あっあっ♡ すごい、せんぱい、すごいです、あぁん、やだぁ、こんなの……こんなのくせになっちゃ……、あっ、あっ、あぁん♡」







 先ほどまで彼女の股間を慰めていた柔らかい舌の肉が、香の口内をうねるように犯していく。香がただ口を開けているだけで、舌が絡め取られて、唾液が注ぎ込まれて、歯茎を這うように犯されて、挙げ句の果てに武智に唇をちゅーちゅーと吸われてしまう。

「んっあっ……ふ、……ん、んぐ」

 生暖かく粘っこい武智の唾液と自分の唾液が混ざったものを、香はなんども嚥下してしまう。今までの真堂香であるならば、嫌悪すべき行為に入るのかも知れない。だが今の彼女はその行為に逆らえない。彼の舌をぬろん、と舌ではじき返すと自分の口の中が気持ちよくなるなるなんて知らなかったらだ。舌先でちろちろとお互いを舐め合う度に頭がぼーっと痺れて股間が潤うなんて想像もできなかったからだ。

 そして真堂香は、羞恥と淫蕩、貞操と快楽のせめぎ合いの中、共に後者を選んでしまった。半裸に剥かれながらも、その両腕は武智の首に巻かれて、下半身は蛙のようにはしたなく開き、無防備な股間に武智の右手を股間に受け入れている事実が今あるのだ。

 それだけ武智が彼女にもたらした快楽は、彼女が今まで嗜んできたものが霞むぐらいの刺激を与えてしまったと言っていいだろう。

「ふぁっ、……あっ……あっ、せんぱ……せんぱい、いっちゃう、またいっちゃいます♡」

 ゼロに近い距離の香の口から、こもった吐息と共に溜った悦楽が溢れ出す。途切れ途切れの切なさを孕んで、喘ぎ声を吐き出す彼女の口元が無意識につり上がる。そう、真堂香は今まさに来る絶頂の波を完全に歓迎しているのだ。

「いいよ、そのままイっちゃうところ撮ってあげる」

 武智がよいしょと体を起こすと、当然彼の首に手を回している香の上体も起き上がる。香が視線を横にずらせば、三脚にセットされたカメラと視線が合ってしまい、香の蕩けた脳内に理性が戻ってくるのだが、

「あっ、はぅぅぅ……♡」

 かしゅかしゅと股間の肉芽を武智の右手が擦り上げたことで、彼女は再び理性を手放してしまう。香が股間からの刺激を堪能しているうちに、武智は手際よく香の後ろへと回りこみ、左手で彼女の顎をくいっとカメラへと向けた。当然右手は彼女の股間を継続してくちゅくちゅ、くちゃくちゃと弄っている。

「せんぱい……恥ずかしい、こんな格好……あっ……あっあっ♡ ……はぁん♡」

 まるでアダルトビデオのワンカットの様に、武智の膝上に乗せられて足を開かせられる香。後ろから武智に耳をしゃぶられ、敏感な首筋に柔らかな武智の舌の感触を感じる度に、香の股間が発する水音はどんどんはしたなくなっていく。

 それでも、さすがにこの体勢で絶頂の様を撮られるというのは、やはり香には抵抗があり、彼女の内なる葛藤はまだ生きている。だがしかし、そう思考した香の脳内に甘く痺れる何かが割り込んできてしまう。それは股間の直接的な刺激でも、舌のねっとりした心地良いものでもない。

「やっ、あっ、あっ♡ ……あ、あん、だめぇ、これだめぇ♡ せんぱい、だめ、やめて、やめ、あっあっ、あっ、んぅっ♡」

 キスの前に、軽くおしゃぶりされただけで放っておかれた香の乳首が、武智の指に両方ともこりこりと弄ばれている。ぴんぴんと弾かれ、絞られ、撫でられ、擦られて、おもちゃの様に扱われて、硬くしこっている。

 クリトリスやアナルのように溜った快楽を消費する類いのものでなく、ひたすら下腹に溜め込まれる甘美な刺激。まるで別物になったような両乳首を弾かれる度に香のお腹の中にざわついた快楽が溜められていく。

 もう切なくて堪らなくてアソコを弄って解放して欲しいのに、武智の両指が香の乳首をくにくにと弄り倒しても、いやらしく摘まんだり、側面を激しく擦り上げても、香が抵抗をすることなく我慢をして体をびくびくさせているのは、香の中で辛くて気持ちよくて切ない乳首の翻弄も、捨てがたく思えてしまっているからだ。

「あっあー……♡、そこ……それ、すごい……んっあっ♡ あっあっあーっ♡」

 こうなると真堂香の選択肢は我慢していっぱいイくか、もっと我慢してもっといっぱいイくかの二択となってしまい、

「あ♡ ふぁぁぁぁ♡」

 溜まりに溜った快楽の素が再び股間からくちゃくちゃと消費され始めた時、もう彼女に正常な判断力など残ってはおらず。

「ああん♡ いく、いくいく、せんぱいっ。いくいくきもちいっ。もっと、もっとぉ……、あっあっ、あっ、あん♡」

 快楽を消費するという歓喜の中、無意識に香の左手が口元に持って行かれる。
 甘えるように小指を咥えて蕩けた香の瞳が、カメラを凝視する。
 口元を何かで支えないとゾクゾクと下半身から駆け上がる快楽を受け止められないかのように。

 ぴっちゃぴっちゃくっちゃくっちゃと、

 それほどまでに今、香の体は緩んでいるのだ。

「あー……♡ いく、いくいく、いっちゃいます、またいっちゃぅぅ♡」

 香の上半身が段々と反り始め、彼女の口がだんだん開き、次第に彼女は武智に体重を全体重を預けて、足を広げて、

「あはぁっ♡」

 香の惚けた瞳から涙がこぼれる。口元からは涎が垂れて、肩は強ばり、両手は固まり、足の指が窄まり、腰が大きく震えて、がくんとせり出し股が開く。香の体が何かを出したいと、喜びに震えて、

「あっ♡ おっ♡」

 収縮する膣内から、ぴゅっぴゅー、っと透明な液体が噴水の様に弧を描き、

「あぁぁぁぁぁぁぁ♡、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ♡」

 それを呼び水にして、もはや香り自身には止めることが出来ない快楽が水気を帯びてぶしゃぶしゃと吹き出し始めた。

「あっあっ、やだぁ、やだぁっ♡」

 止まらない絶頂の中、武智の指が追い打ちを掛けるように香の股間で蠢く。
 最後まで絞り出せと言わんばかりの勢いで武智の指が香のクリトリスと膣口をかき混ぜる。

「んいぃっ♡ もうだめ、またいっちゃ、またいくううう♡ あはぁっ♡ あはぁぁぁぁっ♡」

 蕩けた香の表情と、はしたない股間を余すこと無くとり続けたカメラレンズに、御礼とばかりにぶしゃりと、香の股間から飛び出した飛沫が降りかかる。

「はぁ……はぁ……こんなの…もう……あぅぅ♡」
「わはは、香ちゃんすごいねぇ溜ってたんだねぇ」

 そんな陽気な武智の台詞に、香は拳を振り上げて抗議するが、数回の絶頂後の彼女にそんな力は無く、ぽこんと可愛らしく武智に当たるだけである。その後は武智の膝の上で快楽の余韻に浸るだけで済む。ひくつく股間を優しく慰め、こりこりと乳首やクリトリスを転がし微睡む至福の時間を彼女は楽しむ筈だった。

 そう、今、彼女の手が武智の股間を叩かなければ。

「え、香ちゃんまじ、サービスしてくれるの、いやぁ。なんか悪いなぁ、いや実は俺も結構しんぼうたまらんって感じでさぁ」

 と、いそいそと武智はズボンを脱ぎ始める。

「ち、ちが。私そんなつもりじゃ……」

 香の抗議の声が尻すぼまりになったのは、武智が香の乳首をこりこりと転がし始めらからだ。

 こりこり、なでなでと

 絶頂で弛緩した乳首が再び育てられて、してもいない期待が体の中で膨らんでしまう。心は望んでいなくても、体が、股間が緩んでしまう。そんな曖昧な状況の中、香はその半開きの口を閉じなかった。中途半端な期待から心まで揺るんでしまったのだ。結果、香は唾液で潤ったその可愛らしいお口に、武智の生臭い粘液に包まれた肉棒を差し込まれてしまう。

「いいぞー香ちゃん、ほら、こっちみて、ちゅーって吸うんだ。さっきのキスみたいにさ」

 そして、そんな武智の言うがままに、香は口の中にほおばった熱い感触を吸い取ってしまったのだ。

 じゅる

 という、思ってもみない下品な音に香は驚き、口を離すが

 ちゅぽんっ

 という更に下品な音が立ってしまう。ふと視線を香が武智の股間に視線を移せば、目の前の武智の肉棒が更に硬く熱くなっていることに気づき、口から目の前の肉棒に繋がっている唾液の糸を見てしまったことで、彼女は自分がしたことで何が起きたのかを認識する。

 そして、香は思った。もう言い訳はできないと。弄られ、イかされ、はしたなく潮を噴かされても、武智だから、武智に求められたからと言い訳できた。だが今の行為は違う。乳首をひねられて、こりこりされて、能動的に自らしゃぶってしまった。味わってしまった。そして、期待してしまったのだ。

 しゃぶれば、武智は自分の股間もまたしゃぶってくれる。きっとそれ以上もしてくれると。そんなどうしようもない卑猥なコミュニケーションを、碌な会話を交えずに成立させてしまった。そんな事実を、そんな、どうしようもない事実を、

 なんのことはないと、
 それがどうしたと、

 思えてしまう今の自分に、香はなにか決定的な変革が自分の中に起きてしまったことを自覚してしまった。そんなことは後で考えればよいと、捏ねられている乳首の気持ちよさがそう言っているのだ。舌ではとどくことの無い上顎を亀頭でずりずりと擦られた感覚がそういってるのだ。

 故に、香は再び武智に促されるまま、彼の肉棒にしゃぶりついてしまう。れろれとと舌を動かし。武智の肉棒を完全に受け入れる。ちゅっちゅ、ちゅぱちゅぱと口から発する下品な音で、香は無言で答えを示してしまうのだ。

 そんな香の様子を武智は上から見下ろし彼女の頭を抱えながらゆっくりと腰を前後させる。ああ、誰かのもので自分の欲望を処理するという行為は、なんて気持ちがいいんだろうと。なんて心地がよいのであろうと、

(すごく、満たされて落ち着くなぁ)

 ちゅぱちゅぱじゅるると、ゴンドラ内に響き渡る香の口元をゆっくりとねっとりと犯していく。たまに奥までついて困らせたり、柔らかい頬肉や唇に擦りつけて堪能したりと。

 当然初めてのおしゃぶり行為である香のテクニックは決して熟練のものではなく、おぼつかないものであったが、人のものである彼女の口内を亀頭から漏れる我慢汁で余すこと無く塗りたくり、犯していくという行為に、早くもどくどくと武智の尿道が拡張し始めた。

「香ちゃん、出すよ。髪とかにかかっちゃうと面倒だから、全部飲んでね、っと」
「ん、……ん、え、ふえ? んむぅっんんん、んんーっ」

  香は武智の肉棒を咥えたまま頭を振って抗議をするが、
 武智の両手ががっしりと彼女の頭を押さえこみ、

「あー、出る出るっ。香ちゃん、出すよっ、お……ほっ」

 びゅるるる、と香の舌にゼリー状の生臭い何かが出される。生理的な嫌悪感を感じ、口を離して吐き出そうとするが、武智の強引なピストンがそれを許さない。結果舌の上に溜めていた精子が、肉棒の出し入れにより口内にまぶされてしまい、それを反射的に舌がなめとってしまう。無垢な彼女に強制的に精液の苦みと生臭さを味あわせてしまう。

 苦渋に蠢く舌の動きは、未だ口の中にある亀頭を撫で上げる形になり、第二陣、三陣のねばっこい精液が、香の口内に放たれる。

「んんんんっ……んぐ、……んむぅ」

 ごくん、ごくん、と

 とうとう行き場を失った精液が香の食道を下っていく。苦みと臭みが食堂を下り、彼女のお腹に落ちていく。香りはその行為が苦しいのかそれとも悔しいのか、それとも苦しさの向こうにある被虐的な行為に興奮を覚えてしまったのか、彼女は目に涙を溜めながらちゅるちゅると根元から絞り上げて飲み干した。

「あ゛ー、きっもちよかったー」

 そんな香の表情に征服感と背徳感を見いだしながら、武智はちゅぽんと香の口から自分の一物を引き抜く。

 半開きになった香の唇と武智の肉棒との間に卑猥な糸の橋が建設されてすぐに崩れおちるが、彼女の半開きの口の中にまだまだ粘ついた何かが居着いているのは間違いない。

「……先輩?」

 何かを抗議する香の表情に

「お、二発目いっとく?」

 と爽やかに自分のチンコを奮い立たせる武智であったが、

「そうですね、結構な話です。でもその前に」

 にこにこと殺気を放つ香が武智をソファベッドへと押し倒し、

「お返しです」

 と、そのねとねとのままの口内を開き、苦い粘液にまみれた自分の舌を武智の口へと塗りつける。香にしてみれば自分の精液を味あわせるという仕返しのつもりだったのであろうが、それは武智にとって逆効果である。神田佳奈美や牧村真紀、そしてその他の女と武智がどれほど濃厚なプレイをしているかなど、香は知るよしも無いだろう。当然武智はこの行為を仕返しと撮らず、おねだりと取る。

 結果。

 精液のお返しは濃厚ないつの間にか濃厚な接吻に早変わりし、再び高ぶらされた香の痴態は、水滴越しのレンズに全て捕らえられてしまうのである。

『ドリームスカイウェイ、終点でございます。ゴンドラの下降が始まりますので揺れにご注意ください。残り一五分ほどで降車となります。この度はご乗車まことにありがとうございました』

 そんなアナウンスの背景にして、武智と香の舌が絡み合う。既にお互い服を着て後始末も済んでいる状況だが、お互いの手はそれぞれの体を弄っているし、二人の顔の距離は離れない。

「せんぱい……だめ、濡れちゃう」

 言葉とは裏腹に、香が拒む様子は無い。インナーの中で、硬くそそり立った乳首と、くちゃくちゃと潤っている股間の余韻を楽しむ時間はまああるのだ。それまではこの夢の中にいてもいいだろうと、香は心の中で反芻する。舌をぺろぺろと動かしながら、武智の股間をさすりながら、時間が許す限り、言い訳を探していくのだ。

 きっと、これからも、ずっと。




 所と時が変わって、場所はテーマパークに設置されたトイレの裏手側である。

「せ、先輩、まずいっすよ、俺、真堂いるし、その……」
「えへへ~、大丈夫、ほんのお礼だって、あ、えろっぱはだめだよ~? そうだねぇ、後ろからなら大丈夫かな。ゴン君はぁ~、佳奈美のためにい~っぱい頑張ってくれたからぁ、お手々でしこしこぴゅっぴゅさせて上げるの☆」

 権野は佳奈美に壁に手を付かされ、後ろから抱きつかれてチンコを扱かれていた。佳奈美の豊満な胸が、権野の背中で柔らかく潰されるという幸せな感触と共に、百戦錬磨の佳奈美の手コキテクニックで、腐っても童貞少年の権野のチンコは、もうばっきばきのぼっきぼきである。

「いいんだよ~☆ ゴン君、ほら、ね? 香ちゃんには言わないであげるからぁ、ほら、イって、佳奈美の手でぴゅって出して、佳奈美のお手々をいっぱい汚していいんだよー?」
「う、うああああ。せ、先輩我慢できねっす、でる、でるぅううう」

 権野の下半身が震えてがくんと腰が揺れる。佳奈美はその動作を愛おしそうに受け入れて権野の体を優しく後ろか抱きしめたまま、びゅーびゅーと勢いよく射精する権野の陰茎を根元から絞るように扱き上げた。

「あはは☆ ゴン君は素直でいい子だねぇ。もっと、もぉっと出してもいいんだよぉ?」
「うあ、かなみせんぱ……う、お、お、……ああああああっ」

 そんな様子を、武智はトイレの裏手の更に奥の施設内森林の木の陰で伺っており、その武智の股間を真堂香がちゅっぱちゅっぱ、としゃぶっていた。

「あ~、香ちゃん。出すよ、いい?」
「もうっ、何度目ですか? はやく集合しないとみんなに怪しまれますよ……んっ♡」
「それじゃぁさ、香ちゃんのえっちな所みれば出ちゃうかな~?」

 と、武智は香の乳首をこりこりと摘まんでひねる。

「んっあっ♡ きゅ、急にやめてください、あっんっ。ばか、せんぱいのばか、あっあっだめ……、またぬれてきちゃ、んぐぅ♡」

 香の清楚な髪が風に揺れる。乳首を摘ままれ切なそうな表情で股間をしゃぶる彼女の表情は、武智の性癖を痛く刺激した。びゅるびゅるとその彼女の小さな口の中に己の欲望を出し切った後、武智は録画中のスマホのデータを、ぴ、と削除したのであった。




 こうして、集合に一時間ほど遅れた真堂武智組と神田権野組は、待ちぼうけを食らった牧村中田組に小一時間小言と説教を食らうわけだが、概ね表面上はこのトリプルデートは楽しく和気藹々のまま、終わるのである。

 帰りの車の中で、佳奈美はボッキーグッズに埋もれて眠り、権野と真堂もお互い肩を寄せ合って眠っていた。

「ま、初デートだもん。緊張するよねー」
「うん、まあ俺たちの時もそうだったしな」

 と、牧村と中田が彼らの健闘をたたえていたが、権野と真堂が二人とも全くデートとは異なるところでスタミナを消費してしまっている事実を知っている武智は素知らぬフリである。

 運転手の淀橋は、まず牧村と中田を地元の繁華街で下ろす。どうやらこれからは二人きりの時間らしい。次に眠っている権野を自宅前まで送る。

「今度は彼女を送り届ける甲斐性をみせろよ、トシ?」

 という武智に対して眠そうな顔で、おうと返すが、その様子をみるに彼にそこまでを求めるのは無理かも知れない。

 そして次は真堂香の自宅前で彼女を下ろして、武智は淀橋へ言った。

「それじゃ、淀橋さん。またランドに戻ってくれる?」
「……かしこまりました」

 淀橋はミラー越しにまだボッキーぐるみに抱きついてグースカ寝ている佳奈美を見ながら、独り言のように呟く。

「……お気づきでしたか」
「いや、これ気づかなきゃお役目失格でしょー、淀橋さんもごめんね。手配とかランド職員の抱き込みとか大変だったでしょー、今回」

 武智の問いに淀橋はクスリと笑う。

「いえ、私は仕事でございますので、後始末は後ほどつけるつもりでしたが、ぼっちゃまにもお手伝い頂けるなら助かると思っておりました」

 ヒントは佳奈美との過去の会話である。

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「そーそー☆ 海の真上で開放感いっぱいで騎乗位って、凄い体験だと思わない? ぜぇーったい、すっごーい気持ちいよ☆? ね、ね、ね☆?」

 このデートの真の目的が明らかになり、どん引きするアベック二組。
 だが武智はどこまで平常運転である。彼はどうせこんなことだろうと思っていたのだ。

「はいはーい、佳奈美先輩そこまでそこまで。俺がその空中ラブホの中でしっかりと可愛がってあげるから、先輩の性レベルにそこらの幼気な子犬たちをまきこまないよーに!!」
「えー、一週目の後は相手とっかえて……むーむー!!」

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「ほえ、ヒロ君。ハメ取りするの?」

 と佳奈美が呟くが、

「いやいやいや、先輩、これアベックルートは一周一時間近くあるんですよ、せっかくだから俺の新聞に景色を載せたいじゃないですか」
「あ、そっちか。まあ大丈夫、別にいいよ」

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「佳奈美先輩のことだからアベックシートに全部カメラ仕込んでたんでしょ、多分室内ミラー越しかな」

 武智がそういうと、淀橋はその通りでございます、と返す。

「しかし、何故ですかな光博ぼっちゃま。映像でしたらお嬢様に言えばいくらでも融通できたでしょうに」
「あー、それね。絵が欲しい訳じゃないの。ちゃんと香ちゃんの映像は消してあげないとね。きちんと約束しちゃったからさ。何より俺が撮ったものじゃないからね、これは」

 ポリシー違反なんだよねー、と。
 その様々な意が詰まった武智の言葉を、

「さようでございますか」

 と、淀橋は会話をしめた。
 ぽつぽつと水滴がフロントガラスにつき、ワイパーを淀橋が作動させる。

「ま、佳奈美先輩には俺から言っておくから、安心して」

 そういって武智はゆっくりとまぶたを閉じる。
 横で寝こけている佳奈美の頭を撫でながら。

 雨の中走る車の揺れの中で、武智は思い出す。

 ああ、そういえば。
 彼女と初めてあった時も、こんな雨だった、と。

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