マスター☆ロッド げいんざあげいん

プロローグ


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 ――地下深く、とある迷宮の薄暗い部屋の中、とある男の声が響き渡る。

「ふぉおおおお!! キタキタキタキタぁああああ!! この締め付け、この弾力、まさに新感覚!!」

 すぱぱぱぱん、と激しく腰を動かすその男は、元地球人、そして現、この迷宮支配者である。地球人の頃の彼の名を新井徹といった。

「ふはははは!! 小刻みにぷるぷるしおってからに、この淫売め、感じているのか。ほらほらほら!! ええんのか、ええんのか、ここがええんのかぁ!?」

 そう叫び、徹は中腰のままさらに抽送の速度を上げる。徹の腰がそれに打ち付けられるたびに、狭い部屋の中にぱんぱんと、肌と肌がぶつかり合う音が小気味良く響いた。

「フンフンフンフン!! くっくっくっ、この好き者め。いい締め付けだ……褒美にたっぷり出してやるぞ、そーれ、そーれ、そ――おふぅッ」

 決め台詞の途中で徹の腰がガクンと砕ける。ビクンビクンと彼の体全体が痙攣し、徹はその精を吐き出し、快感の余韻に浸る。全ての精を放出しきると、徹はその股間部分に宛てがっていた球体状の生物。あえてこの世界風に言えば、スライムと呼ばれる生物の中から逸物をすぽんと抜き、そしてぽいっと放り投げる。

「ふぅ……」

 ぽよんぽよんと、弾みながら部屋から出ていくメタルスライムを見送ると、徹は徹は部屋の机に設置されているノートを開き、書き込みをはじめるのであった。

「…………あー、メタル属性のスライムは新感覚だったわー、予想に反して中身全然硬くない。むしろ柔らか、今まで気付かなかったのは勿体無かったなぁ……。あと三ヶ月はこれで生きられるね。ちょっとだけ挿入時に冷たいのが玉に傷……、と」

 使いやすさ・締め付け・耐久度など、サラサラと項目を徹は記入していく。そして、ひと通りの情報を記入した後、ペラペラとページをめくると、そこには徹が記した情報が、事細かに記されていた。例えば、毒属性のスライムの安全なオナホールとしての使用法や、地下キノコから作るトリップ剤(自分用)、そして触手モンスターに優しく乳首責めやアナル責めをしてもらうための調教方法など、偏ったものばかりであった。

 今までの情報を見返し、満足そうに徹は頷くと、ふー、と大きな溜息を一つ吐く。いわゆるやりきった男の顔であった。

――そして、


「だから、何をやってるんだ俺はぁあああああああああああああああああああ!!」




 地球が存在する世界において、世間に不必要な魔法使い30歳新井徹は見事異世界転生という目的を果たした。しかし、それは羨むべき勇者召喚でもチート神様転生でもなく、朽ちて、閉じた古代の迷宮の支配者として、地中深くに放り出されてしまったのだ。

 今いる場所が、果たしてどのくらいの深さなのかも分からない。この一年間、出口を探して堀進めているものの、一向に地上へと出る気配は無かった。何故か空気はあるので息はできる。飲水は地下水脈を掘り当てた。火や明かりはなんか前任者の遺物があり魔法でなんとかなっている。食べ物は専ら迷宮に生えるキノコであった。

「どうしてこうなった」

 そう呟いて徹はマスターロッドを一振りし、遠視投映ディスプレイの魔法を使う。そこには、美しく広がる異世界の風景が広がっていた。そしてその時々に映る冒険者達の姿を羨ましく思いながら、徹は歯ぎしりをする。

 遠視投映ディスプレイごしに、彼らから聞こえてしまう、明らかに転生を果たした前提からしかありえない会話が、徹の心にザクザクと突き刺さる。

 ――片や地中深くでスライムで寂しく性欲処理を行う新井徹。
 ――片や同じく転生を果たし、きゃっきゃうふふと、異世界美少女達とちちくりあう元同胞30歳童貞達。

「……不公平だぁ」

 血の涙を流しながら、徹は呟いた。

 女の子から転生者へ向けられる羨望の眼差し
 腕を組んでいる時に肘に当たっている明らかな胸の膨らみ
 そして約束されたラッキースケベ

「ああああ……あああああああああああ!! その乳と太ももは俺に配られてもおかしくなかったのに、なんで俺だけこんなんなってるんだぁああああああああ!! そそそ、その胸ちょっといいからつつかせんかーい!! 股間に俺の顔挟まんかーい!!」

 このダンジョンの備品であるマスターロッドにより、遠視投映ディスプレイの魔法を知り、そして使用した時、徹は酷く現実に打ちのめされた。それもそのはず、そこには確かに彼の夢があった。彼の思い描いた希望があったのだ。しかしその世界は、今の徹がいる場所からは、決して届かない隔絶された世界であった。

 しかし、ひとしきり現実に打ちのめされた徹であったが、その絶望は今や日々の糧である。

 ――そう、このままでは済ませない。済ませてやれるはずがないのだ。

 奴ら勝ち組は最早同胞などでは無く、徹にとって明確な敵である。

 地中深くで蠢き、蓄積され、吐き出され続けたこの怨念が、その地上に噴出するまであと5年。その5年間は、徹がマスターロッドの能力全てを把握し、引き出し、そして、広大なダンジョンに守られ肉棒で物事を考える無敵のエロ魔王と成り果てるのに十分な時間であったのだ。





 ――マスターロッド

 それっぽい名前をしているがいわゆる魔法の十得シャベルであった。どんな構造をしているのかはまったくの不明だが、用途に応じて長い柄の先がスコップ・ピッケル・楔・ドリル・ハンマー・桑・タンパー・エンピ・トンボ・手押し車と多岐に変化する工具みたいな杖である。というか掘削整地工具そのものであった。

 そんなマスターロッドその特性として開拓した空間を自由に支配できるという効果があった。つまりはマスターロッドで掘り進めた空間は徹の思うままになるということである。空間単位は2メートル立方で1ブロックとされ、様々な効果のある地形を生み出すことができた。


 例えば、『発熱』。
 掘り当てた地下水脈から水を引き、この地形を経由させることでお湯にし、居住区に温水を引いたりもできる。

 例えば、『変遷』
 微生物や、地中の虫などが突然進化し、モンスターとなる。生まれたモンスターは徹の命令を遂行する忠実な兵士となる。ちなみにオナホール用のスライムもこの効果で生み出された。

 例えば『促進』
 養分を集中して吸い上げ分配し、生物や植物を巨大化させる効果。

 しかし、このダンジョンは史上稀に見る鬱屈した動機と青臭い童貞信念にて造られていたので、

 通過しただけで尿意を催す『お漏らし』ブロックや、思わず乳首やクリトリスが立って衣服にこすれる『隆起』ブロック、さらに身につけている下着がワンサイズ自動的に小さくなる『伸縮』ブロックなど、くだらないギミック童貞の趣向がいたるところに備え付けられていた。

 また、開拓した領域には侵入権の設定が可能である。徹が許可しない限りは、マスターロッドで開拓した領域にはあらゆる物質は入れないという、反則概念武装であった。

 それはこのマスターロッドがダンジョンごと近く封印された一番の理由である。――「干渉できないものであるならばその領域ごと封印するべし。実際徹が最初に目覚めた居住区画は現迷宮では最深部であるが、実際はその地下には以前マスターロッドが使われて造られた領域が広がっており、その上に土を被せられ、魔法によりさらに地中に落ち込まされ、マスターロッドは地中深くに封印されることとなったのだ。このような封印手法がとられたのは、支配領域を広げるためにはその持ち主が、自らその領域を拡張しなければならないといった弱点があったからである。

 だがしかし、新井徹には時間があった。そしてやるべき目的があった。彼を支え続けた煩悩は、5年間という期間をもって、彼に広大で強力な支配領域と、無駄に強靭な足腰を与えてしまった。


 そして今、新井徹の煩悩ならぬ煩念が成就する。地上への道を塞ぐ最後の大岩をマスターロッドで叩き割った時、彼の体をこの世界の太陽が初めて照らし出す。

「ふは、ふはははは、待っていろ!! 全てのおにゃのこは俺のものなのだ!!」

 洞窟から盛大に噴出し、立ち上る漆黒の瘴気童貞臭をバックに、新井徹はこの世界に宣戦の布告をする。

 彼の亀頭から、歓喜の我慢汁が陽光に反射し、キラリと光る。そう、彼は童貞かつ変態かつ、裸族であった。

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