歪曲コミュニケーション

22話 修学旅行の終わりに


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 修学四日目。武智光博の朝はとてもめんどくさいことになっていた。

「いやー、ここのお風呂凄いねー、最上階だけあって露天風呂だよー」
「雨も小雨だし、風もないし風情だねー、みやびみやびー」

 ほかほかと湯煙を体から立ち上らせながら、結城姉妹が和室にもどってきて、武智の両隣にすとんと座る。おそらく浴衣の下は下着だろう、目の前の三人がいなければプレイの続きを今すぐしてやるぞというオーラがそこはかとなく迸っている。そして対面にいる牧村真樹と大生沢茜は最初こそ騒ぎ立てたものの、今は微妙な顔をしてテーブルに突っ伏していた。二人の頭の中では情報処理の負荷が許容量を超えてしまったらしい。一番の若手である真堂香だけがいつもと変わらず、てきぱきと皆の分のお茶を入れたり、おかしをぽりぽりしたりと平常運転という案配だ。

「うーん、どうしたもんかなぁ」
「どうしたもこうしたも、説明すればいいんじゃないですか」

 真堂がぽりぽりとポッキーを頬張っている。小動物さながらに可愛らしく食しているように見えるがいつのまにかすでに一箱平らげている。彼女は彼女でちょっと苛ついているのかもしれない。

「別に私たちは問題ないよー、合意の上だし」
「そうそう、わりきりわりきりー」

 結城姉妹は昨夜の行為で心のつっかえが取れてしまったのであろうか、いつもの守備的な言動はどこへやらといったご様子だ。いまや彼女達は持ち前のボディをあらわにして、女としての魅力をふんだんに発している。処女を失った次の日の少女これしかり、昨日までの初なおぼこよさようなら。今やマルチプレイだろうと、夜明けまでセックスごときではビクともしない一人前のスケベ女子の誕生である。そして次はいつしよっかーなどと武智に甘い声を出していた時だ。

「あ、それです」

 無敵の姉妹に対して唯一抗戦できる真堂香が立ち上がる。二箱目のポッキーを無造作に取り出し、二本一緒にシャクシャクと平らげると。

「順番的には、私では?」

 と、すびしと自分を指さした。

「うっそーん、香ちゃん二日目の夜に犯り倒したやーん」

 そんな武智のうんざり声も。

「え、は!?」
「はぁ!?」
 
 素っ頓狂な声を上げて機能停止に陥っていた牧村と大生沢がむくりと起き上がる。

「み、光博あんた……!!」

 という牧村の抗議も

「後輩のアナルを無理矢理レイプするなんて見損なったぞ武智ぃ!!」

 という大生沢の叫びにかき消される。

「いや、無理矢理じゃねーし。ほら茜だっておととい『やめてよ』っていいながら、股開いたじゃん? 好きにすれば系合意行動おざなり派ってやつだろ。合意の一種だろ、俺知ってるもん、真樹ちゃんで経験済みだもん。乙女の純情な感情に応えただけだぜ」

 との武智の言葉に牧村の首がぐぐいっと大生沢を凝視し、逃げるように茜の首がぐるりと回る。そして自然と彼女の視界に入ってきた香が、

「茜……あんたまさかっ」
「大生沢先輩可愛いところあるじゃないですかー、そのシチュエーション燃えますよね、わかります!!」
 
 牧村の抗議の声をまたもや抑えて、真堂がぎゅっと大生沢の手を握り目をキラキラさせて言った。きっと観覧車でお漏らし行為や股間をぺろんぺろんされたことを思い出しているのだろう。

「ち、ちがうもん。そんなことしてないもん!!」
「またまたぁ、私知ってます。武智先輩って優位に立つとすっごくスケベになるんです。私もなんど恥ずかしいことを言わされたか」

 尚もぶんぶん首を横に振る大生沢に、

「あ、ごめん茜ちゃん。悪いと思ったけど私達あのとき隣の部屋いたんだー」
「ごめんちょ☆ でも茜ちゃん可愛かったよー、あのフィニッシュは絶対オリジナルだよー」

 結城姉妹がトドメを刺した。

「ああ、手つなぎ騎乗位先っちょぺろぺろベロチューラブラブエッチのこと? 確かにあれは茜並の体幹と腰振りのセンスが」
「うがーやめろー馬鹿武智ぃいいい!!」

 もはやこの集まりではお馴染みとなった無慈悲な座布団砲が武智を襲った。ちなみに両手を繋いだまま、仰向けの武智にまたがり中腰で激しく腰を上下に打ち付けながら、舌先をチロチロ結び合うエロさと筋力が両立しないとできないアクロバティックプレイである。

「なんでや、お前もいっぱいイってたじゃんか!! 後ろからパンパン突かれて喜んでたじゃんか」
「そーいう問題じゃなぁぁぁい」

 座布団砲二発目が武智に打ち込まれたところで、ようやく牧村が口を開く。

「つまり、私達って全員竿姉妹……」
「……そういうことになりますね、姉さん」
「「きゃー、真樹おねーちゃーん」」
「え、私何、三女ってことになるのこれ」

 牧村のどんよりした事実指摘に対して、真堂、結城姉妹、大生沢がこぞって顔を見合わせた。

「はああああああああ……」

 どでかいため息である。一番最初に犯されて、武智との関係が深いと思われる牧村真樹
の次の発言に、全員が注視する。

「わかった。んでどしよっか」

 それはなんともサバサバとした答えだった。とはいっても当たり前かも知れない。牧村という少女は元々この関係に悩むことなどないのだ。なぜなら彼女の心は満たされている。体も満たされている。それが例え別々の人物でも。いくらセフレでも節操がないとか、そんな考えは、牧村真樹という人間はとうの昔にどこかへと売り渡しているのだ。諦めきれない快楽との等価交換として、武智に犯された後も、自ら彼の部屋を訪れた時点で。

「さすが真樹先輩。そういうと思ってました」
「香ちゃんもこーいうの覚えちゃったんだね、まあ辛くないならいいんじゃない?」

 真堂香も同じである。彼女も心と体の問題を表と裏に分けて考えることになれてしまった。母性と親愛を権野に、肉欲と背徳を武智に。それはとても褒められたものでは無いけど、彼女にとっては妥協無き青春の姿である。野球部での権野の世話やデートも、武智とのアナルセックスも、等しくそれぞれの感情において一番なのだ。他人にどう思われようとも彼女の中身はそのように歪んでしまった。

「え、みんないいの? 本当にいいの?」

 そういう大生沢茜も頭の中では理解している。一昨日彼女の体に覚え込まされた快楽はもう絶対に現彼氏である塔野巧からは望めないものであることがありありと証明されてしまっていた。そして己の性欲を発散したあとの爽快な感情と体の開放感は、麻薬のように彼女の体に刷り込まれているのだ。それは満足させてくれない彼氏が悪いなんて責任転嫁もしてしまいそうなくらい甘く昏い誘い香。正直言って自分自身がそれに抗えないことは本人もわかっている。

「私達は別にたけちーを独占する気は無いよー?」
「ただやっぱ藤子としたいときおちんちんだけ借りたいなー、えへへ」

 結城姉妹に至っては覚醒してしまったと言っていいだろう。このクレイジーで純粋なガチレズ姉妹は、自分たちの目的のために武智の下半身と性的技術を求めている。姉妹一緒に何度もイかせてくれて、彼女達の事情をわかってくれる存在は貴重そのものだろう。また武智は神田家と縁が深い。後々姉妹は神田家との関係に傾倒していくことにも関係してくるのだがそれはまた別の話だ。

「ふーん、まあ酷いことはしないと思ってたけど随分と好かれたもんだねぇ。やるじゃん光博」

 一通りの意見が出たところで牧村が呟く。表向きは一番些細なことで感情を動かされそうな彼女。そんな彼女は武智の存在を最も理解しているといっていい。その何気ない一言に含まれていた声色から感じる一歩引いた態度。節操ないセックスをたしなめるでもなく、他の女の子の心配をし、それじゃあ当番制にしようかとか、なんて無粋な主張や所有なんて一歩を一切出さないできる女。

 その瞬間、真堂香はやられたと感じた。
 大生沢茜は後からになって気づいた。
 結城姉妹は、ふむふむそうかと学習した。

 普段天然だけど、妙に鋭くて理解があって体もエロい。そんないい女が、人のもの。そんな状況が武智が一番心動かされるのだ。

「お、どうした光博ー。ムラっときちゃった? 私の体、またメチャメチャにしたい?」
「いや、ちょっとまった。お前ずるいぞ。そういう不意打ちはよせって」
「あはは、ごめんね。でも皆もわかるでしょ。コイツと関係続けたいなら大変だよ、隠すこととかごまかすことはすっげー得意なのに、一番自分がやりたいことを抑えられないんだからさぁ……」

 彼女達はその言葉に思い知らされる。真堂香は武智の都合をいつの間にか無視しようとしていた自分を少し恥ずかしく思い、大生沢茜はなぜ今まで牧村や真堂達の行為が秘匿されていた理由を察し、結城姉妹はその言葉通りに納得した。

 今までと同じく、何も変える必要は無いのだ。変わって歪むのは心の中だけでいい。牧村と武智は友人だし、真堂と武智は彼の親友。大生沢茜、結城姉妹と武智はただのクラスメート。牧村真樹とは朝までセックスする友人だし、真堂香とは彼氏の親友だけどアナルセックスをする関係で。大生沢茜と結城姉妹は体だけの関係あるクラスメート。そう考えれば、それが普通の事だと考えてしまえば何の問題も無くなるのだ。

 知られようがない関係はこうして構築されてしまう。だって当の本人達が悪いとか、負い目を感じていないのだ。当事者か現場に立ち会わなければわかるはずも無い。表向きはなんの変化も無く、双方合意の元で誰からも見えない空白の時間や闇で行われる背徳の関係。三百六十度捻れ回ってしまった関係は傍からみても区別がつかない、武智光博という心の歪みがもたらした無垢な女子達との歪曲されたコミュニケーション。
 
「午後からは晴れそうだなー、一応お悩み解決ってことで女子会はお開きでいいじゃないか?」

 心の悩みを解決し、体については後ろ暗いことはあるけど、それぞれ折り合いを付けた女子達はここでの非日常を抱えながら、また日常へと戻っていく。

■■■

「はーい、今日はビーチ解放日ですよー。明日で最後ですから思い残すことないように遊んでねー」
「今日はむさ苦しい武智君に変わって私達結城姉妹と高村君が管理放送を行いまーす。みんなよろしくねー」

 修学旅行五日目、残り今日を含めて二日となる。この修学旅行でなにかといい所がなく、友人と気だるく過ごしていた高村秋継にこの世の春が来ていた。つい昨日のことだ。午前中の小雨がやみ。彼が午後へ向けて放送機材の運び出しや調整を行っていた時である。

「武智先輩はいいっすよねー、仕事っていっても結城先輩達と一日中ガッツリ一緒じゃないですか-、正直男として羨ましいッスって……あだ、あだだだだ!? 先輩痛い痛い、ちょっとマジで痛いッス」

 そうぼやいていた高村の肩を武智の右手ががっしりと掴んでいた。

「そう思う? そう思う? よしわかった。今から特別に君は一時的に俺の後輩一号だ。今日一日はビーチ監視員を申しつける。おっけー? よし、おっけーな。それじゃこれマニュアル、と日差しに負けない七つ道具、わからんことあったら姉妹ズに聞け。よし、これまかせたからな。逃げんなよ。ぜえったい逃げんなよおおお!!」

 と、すさまじい早さで武智から引継をすることになったのだ。

「あっれー、たけちーは? へ? 逃げた~?」
「無責任め~、あとでお仕置きしなきゃだねぇ」

 いざ管理テントで高村が待っていると、そこにはいつもガードがお堅いことで有名な結城姉妹が、それはそれは見事なお胸とスタイルを強調したビキニを着ているではないかという状況である。高村はすさまじい役得を感じ、この場を譲ってくれた武智に祈りを捧げるが……

「よいしょっと」
「いよっと」

 結城姉妹がなにを思ってか高村を挟む位置取りで座ったのだ。右を見てもぼいん。左をみてもぼいんだ。当然下を見ればムチムチの太ももがあり横をみれば、当然クオリティの高い双子の顔がある。

(――ヂィッ)

 という怨念籠もるビーチにいる男子の心の舌打ちが鳴り響いていた。アイツ死なないかななんてマジマジとした視線を高村に送る男子もいる。あそこでこちらを見ながら人が三人ぐらい余裕で埋まりそうな穴を掘っている集団はなんなのだろうか。そして、ふと背後をみればいつの間にか梱包を解くためのカッターナイフがぽとりと落ちている。
 修学旅行五日目ともなれば当然カップルになる予定の生徒達は目出度く番いになり、散ってしまった野郎達は憂さ晴らしにせめて可愛い女の子の水着姿だけでもとビーチに集合したのだ。そこになにやらどこぞの一年坊が、二年のド巨乳スタイル抜群のかわいこちゃんを両手に花状態でニヤニヤしているではないか。こんな光景を見せられて彼等の心に嵐が起きないわけがない。高村秋継はこの世の春と同時にこの世の地獄も味わうハメになったのだ。

「あー、武智先輩が逃げたのはこーいうことなのかー」

 普段の結城姉妹ならいいとこTシャツに学校指定の競泳水着止まりだったであろう。ほんの昨夜に彼女達の悩みが解消されなければ、こうはならなかっただろう。彼女達は自分たちの性的な部分に対して守備的でいることをやめたのだ。そのポジティブさは凶悪な胸の谷間と有無を言わさぬ腰のくびれとなってビーチにいる全生徒を無差別に攻撃した。実際四日目の午後から姉妹はこの格好でいたのだが、それでも武智にくるやっかみは多かった。この五日目、高村に武智がこの仕事を押しつけたのはこのようなわけである。だが高村はそれでも嬉しがっていた。武智先輩ありがとうと心の中で叫んでいた。

「へい藤子ちゃんそれちょーだい」
「はーい、祥子ちゃん、それじゃ代わりにそれとって」

 左右から来る双子姉妹による乳の圧力。それは健全な一年男子である高村秋継にとっては何者にも耐えがたいご褒美である。
 ――そんな中結城姉妹は、高村秋継を値踏みしていた。
 この男は自分たちの闇を何処まで受け入れることができるか、いやどうやってこの男を後戻りできない沼の中心まで引きずり込むか。まるであの時犯されている大生沢茜を見るように、自分中心で自己本位な歪んだ双子思想で彼を見る。彼女達の男女交際における手段とそのハードルは、武智光博によって大きく下げられてしまった。何せ二人一緒に犯されたのだから。もはや乳が触れたやどうしたということなんて今の結城姉妹には苦にならない。天然おぼこの双子娘から計算ずくの淫乱双子に早変わり。
 きっとこの高村秋継という男が完全に籠絡されるまでそうそうかからないだろう。真綿で首を締めるように、決して後退を許さず、彼自身にその意図を気づかせず。五年後ぐらいに二人揃って“できちゃった”なんてことになるかも知れない。

「あれれ、高村君。もしかしておっきくしちゃってる?」
「あはは、男の子だねー」

 結城姉妹は思っている。別にそれでも構わないと。男の股間の弄り方ならもう既に心得ている。心の弄り方はこれからだけど、絶対大丈夫。この子の目が私達の体に向いているうちはこちらが有利に立てるのだ。だって自分たちがそうだった。姉妹達はこれからどんどん学習するのだ。自分たちの講師はとびっきり優秀だ。だって十何年もこじらせていた悩みをいとも簡単に打ち砕き、再構築し、解決させたのだから。幸いこの高村秋継と自分たちは知らない中では無い。今の周りにある駒の中では一番籠絡しやすい、いい子である。
 可愛らしいフェイスの下で蛇のような思考が彼女達を動かしはじめた。そしてそんな虚像の谷間と幻惑の感触にまみれて、高村秋継は今日初めて女の子のおっぱいの感触を知ったのである。 

■■■

「そんなわけで俺ちゃんフリーだ、構え親友」
「お前な、今の状況わかっていってんのか」

 ここはビーチ端の眺めの良い木陰群。突き出た枝葉の下にはベンチが敷設されて、近くには出店もあってカップル成立した生徒達のたまり場の様になっている。当然修学旅行前半における野球部の追求を逃れた権野忠敏と真堂香もそこにいた。

「そうですね、今に限って言えばお邪魔ですよ、武智先輩」
「ぶーぶー、いいもんいいもん。真樹ちゃん探すもん、それで構ってもらうんだもーん」

 そういってすたすたと歩いて行くが、何度も権野達に向けて振り返る武智。どうやらよっぽど暇を持てあましているようである。真堂香はそんな彼に向けてにこにこ顔でバイバイと手を振り続ける。流石にこの状況で尻の穴に悪戯をされることは許容できないし、体が持たないからだ。

「なぁ、真堂」
 
 彼の姿を見送りながら、神妙な顔で権野が呟く。

「最近ミツと何かあった?」

 それは突然のクリティカルな質問だった。
 きっと少し前の彼女だったらぼろを出しかねない突然の厄災。

「最近も何もついこの間手酷いセクハラを受けたばかり何ですけど……」 
 
 思い起こされる修学旅行一日目のビーチ放送。完璧な表情に完璧な間。そもそも今現在の彼女はこんな質問ごときではビクともしない。そしてその言葉は決して嘘を言っていない。権野忠敏はビーチでの放送のことだとため息をつき、ごめんなーと謝り、真堂香は心の中で尻の穴を一晩中擦られたことを思い返している。心がすれ違いながらも気持ちが通じ合うなんとも奇妙な関係ができあがっている。そんな歪さをものともせずに、今日も彼と彼女の関係は進んでいくのだ。少し顔を赤らめた真堂香の顔が権野の頬へと近づき、

「権野先輩からもたまには仕返ししてください、これは前払いですよ」

 と、彼の頬へ軽いキスをした。当然浮かれる権野にはその場面を目撃された野球部員から涙と嗚咽混じりの制裁を最終日に喰らってしまうことになる。

■■■

「やっと二人きりになれたね、お姉ちゃん」

 海辺の人気無い岩陰、大生沢茜と塔田巧はイチャイチャと乳繰り合っていた。

「ごめんな、巧。ちょっと部の連中がしつこくてさ」

 これは事実だ。夜は別だが現に今日まで牧村と大生沢は部員に離してもらえなかった。しかし塔田巧は少し不満げである。せっかく一緒に行ける修学旅行なのだから、もうすこし一緒にいたかったようだ。

「なーんだよ、巧。さびしいんじゃなくて嫉妬かー? えへへ、でもそういうところも好きだぞーうりうり、そんなことより女の子にはもっということがあるだろー?」

 大生沢茜は四日目まできていた競泳水着ではなく、パレオ付きで濃紺のファッショナブルなビキニを着ていた。その状態でのうりうり行為である。健全な一年生である塔田巧には溜まったものでは無いだろう。

「ち、ちがうよ姉さん、ぼ、僕は、あ、ちょ、あっ」
「お、お? 巧ぃ。お姉ちゃんの体で興奮しちゃった? ん?」
「……う、うん。でも、でもでも茜姉さんにこんなことされたら我慢できないよ……」

 そんな懇願するような塔田巧のおねだりは、大生沢茜の心を強く焦らす。

「そっかー。それじゃぁ可愛い巧には罰ゲームと、正直な巧にはご褒美だな」
「え、ちょっとなにするの」
 
 そう言って大生沢は腰のパレオを取り外すと、折りたたんで塔田巧の頭部に目隠しの様に結びつける。濃紺の生地だ、四つ折りにでもすれば絶対に見えない。仲睦まじい年上女子と年下男子の性行為。

「ね、姉さん?」
「いいから、ほら巧も……期待してたでしょ? 大丈夫、絶対に人は来ないから」

 その理由は前もって大生沢が武智にGPSの細工を依頼してここを禁止区域にしたからだ。ただでさえ人気の少ない場所の上、移動が制限されては当事者以外の人が来る確率はかなり少なくなるだろう。

「……う、うん、ちょっとは」
「わるい子だね……うふふ、ほら、出してあげる」

 だれも寄りつかない岩場でおしゃぶりが始まった。ちゅっぱちゅっぱ、はむはむはむ、小さくて柔らかくても、彼氏のちんちんはなんというか愛の味がすると大生沢は思った。そう、岩場の影に武智光博の姿をみるまでは――。当然この場を作り出した当人も当事者である。武智がひょっこり現れたとしても何ら不思議では無い。

「んっんっ、んむ、んむ、ぷはぁ、もうまいったな」

 だが当の大生沢はこの状況に痛く興奮を感じてしまった。ひょっとしたら彼女は人に見られるという行為に少し適性があるのかもしれない。

「ああ、姉さん気持ちい、う、こんなの、すぐいっちゃうよ」
「えへへ、だーめ。これは罰ゲームなんだから一回じゃ許してあげないぞー」
「あっあっ、凄いよ、凄いよ姉さん」
「そう? 嬉しいよ。巧。んん、ちゅ、じゅる、んっあっ、やあっ、んんっ、やん♡」

 それは心地良い咀嚼音に紛れた唐突な甲高く甘い声。塔田巧が行為の時、誤って彼女の性器に強く指を挿れてしまったときに発せられた声に似ていた。

「ね、姉さん?」
「なーに巧 あっ、はっ♡ はぁはぁ、あはぁ♡ んんっちゅる、ちょ、ま、うぁぁああん♡」
「いや、そのなんか声が」
「ん? 自分で弄ってるんだよ、もう恥ずかしい事いわせんな、ばぁか。あぁん♡」

塔田巧の下半身が今まで感じたことの無い快感に包まれる。舌のうねり、唇の吸い付きぐわい、根元を扱き上げる指使い。どれも今までの彼女にはない動きだ。たった一日で塗り替えられてしまった彼女の技術が彼の股間を責め立てる。
 故にどうしても疑念よりも快感の方へ塔田巧は傾いてしまう。先ほど感じた一抹の不安などもう上の空。当然だ、だって受験から今の今までずっと自分は大生沢茜と一緒にいたのだ。そもそも彼女が浮気できる時間なんてないし、男友達だって少ない。部活はいつも牧村先輩といっしょにいるし、そもそも男子と女子は練習場も別だ。彼女についている悪い虫はいないと彼は断言できる。

「んっんっ、ちゅ、んむ 巧、きもひい?」

 そもこの誠心誠意溢れる行為が彼女の潔白を証明しているではないかと、彼はそこでこのことに関して考えることを放棄した。だって今目の前にはこんなに素敵なご褒美があるのだ。このごちそうを味あわないと損になる。

「うん、すごい気持ちいよ、もうでちゃいそうだ」
「だーめ、まだ我慢するの、あっ、あん♡ ふぁぅ、あああんっ♡」

 少年の股に沈んでいる少女の頭、そこから綺麗な背中のくびれを越えた後方。四つん這いになって突き出された臀部にとある男の手が伸びていた。少女が身につけている濃紺の水着は無残にも脇に寄せられて、その可愛らしい割れ目にずっぽりとふとい指が二本も差し込まれている。

「ふっ、ふぅ、んんっ、巧きもちい? おねぇちゃんも気持ちいよ、ああ、うあぁふぁぁそこぉ♡」
「お、おねぇちゃん、きもちいよ、凄いよおおお」
「ん、んぶぅ、ふぅふぅ。ああすごい……これ……すごいぃぃ♡」

 少年は気づかない。少女の両手が自分の股間に添えられていることに。じゅっぽじゅっぽ激しく泡立つような水音が、波の音に紛れてちょっと後ろから重なって聞こえていることに。音と照合できない行為が行われていることに。
 後ろから少女の割れ目に突っ込んでいる腕の持ち主、武智光博は激しく手を動かす。その動きはもはやピストンなど生ぬるい。ボリュームのある尻肉を乱暴に掴んで、尻の穴を丸裸にするほど掴み、もう片方の手でぐっちぐっちと蹂躙の限りを尽くしている。大生沢茜という少女の奥底に溜まっている快楽の汁を噴水の様に吹き出されるようにと心を込めて、ぐにぐにと彼女の腹の中を指先で蹂躙し、腕のしなりで犯している。もはやお口の音なのか股間の音なのか判別がつかないその音は二人の感情をどんどん底上げしていき。

「あっあっあつ♡ 巧。ごめんね、お姉ちゃん先にイくね。はしたないお姉ちゃんでごめんね。ふぁぁぁぁ♡ た、巧、いい、いいよぅ。ああ、きもちー、きもちいいいい♡」
「う、うわああああ、おねえちゃん、茜おねえちゃ……あっ、あっ」

 武智に手マンをされながら高みに登る大生沢は獣のように塔田巧の股間をお口だけで巧にバキュームし、唇と舌先でじゅーじゅーと吸い上げる。そうでもしないと喘ぎ声が出てしまうのだ。今目の前にある彼のチンコなんか問題ならないほどの指がじゅぽじゅぽと彼女の股間を蹂躙して、いやらしいお汁が出るところをずぼずぼ刺激してくれているのだ。

「んふー♡ んふぅううううう。んむうぅうう、はぁもうだめイクイク、いくよ♡ おねえちゃんイくよ♡ 巧ぃ、わたしイ……されちゃ♡ あぁぁぁぁいくぅ、いくぅ、いくのぉいくのぉお、あぁんだめぇ♡」

 びゅびゅっと大生沢茜の下半身が震え、続いて塔田巧の全身がかつて無いほど痙攣する。目隠しをしているというのに彼の視界は白く染まり、幸せな下半身からくる今までに無い快楽と幸せな虚脱感が包み込んでいた。二人は手を繋ぎながら幸せな絶頂を迎える。
 ただ塔田巧はいまだ継続する彼女の喘ぎ声を聞いて、ちょっとその様子を見てみたいと思い、微睡む意識に鞭を打って繋がれていた手をほどき股間を見た。
 そこには幸せそうに自分に抱きつく彼女の姿と、なんだか犯されてうち捨てられたかのような彼女の下半身だけがそこにある。言い様もない不安感が一瞬彼の心を撫でるが、

「はぁはぁ……あ、こらぁ勝手に外しちゃだめだろー、もー。それともまだ足りないのかー? このエッチめ」

 今の状況に彼の体は興奮してしまったのか、随分と元気になった股間が彼女の頬をぺちんと叩いていた。こねこねとそれを優しく撫で上げる茜と、再び腰の下からこみ上げてくるこそばゆい感覚に塔田巧の思考はまた秘め事へと傾倒していく。そう彼には男女の機微における経験がまだ少ない。だから大生沢茜という魅力的な彼女に外でフェラをしてもらえるという事実におぼれきっていて、まさかその後ろからなんの関係も無い男に激しい手マンで彼女がイかされているなんて疑えもしないのだ。
 そして大生沢茜は再び彼の股間に頭を沈める。お股に響き続ける、手マンの快感に腰を震わせながら、もう一回ぐらいこないかなーとか思いながら。

■■■

 バレー部の女子達はきょろきょろと浜辺を探す。ドリンクをかけた部内ビーチフラッグ大会が催されようとしているがいつもいの一番に参加を表明する彼女がいないのだ。

「あれ、牧村どこいったー」
「あー、真樹なら宿舎で電話中。ほら、中田先輩三年生だからこの旅行来ていないでしょ?」

 部員の一言にやいのやいのと黄色い声が彼女達の中でわき上がる。いいなーとか、彼氏ほしーとか、様々なガールズトークだ。

「真樹ちゃんやい、下で探してるみたいだけどいいのん?」
「い、いいっ。はぁはぁ、ああん、止めないで、もっと、もっとぉ」

 ビーチを望む屋上の露天風呂で、牧村は犯されていた。縁に手をつかされて、後ろから。その体には紐のようなマイクロビキニが着せられている。胸のぽっちはまるで乳首を弄りやすくするだけのスケベな布地。股間に至っては同じくクリトリスを優しくコリコリするだけにために付けられた布地が今やぐっしょりと濡れている。ぶるんぶるんと武智のピストンに会わせて揺れる胸が時折揉まれる度に、牧村は気を遣っていた。結城姉妹にも使われたエッチになる薬を飲んで、もう一時間。ずっと武智のピストンは止まらない。

「ひぐ、ひぅうう、あぁぁぁ……、きもちい、すごいぃいい……」

 武智の両手が牧村の両胸を揉む。とたんに彼女の膣が収縮しビクビクと震える。そして、彼女は手を突きながらぐりんぐりんと後ろの武智へと押しつけ、自分でイくのだ。

「ひぃっ、あぅう、いく、いくいくいく♡ あっあっ、光博、おねがい、きゅってして、そう、…そうっ♡」

 マイクロビキニ越しに摘ままれる牧村の乳首。自分の二の腕に寄せられて盛り上がった胸を武智の手が掴み、そしてさきっちょをこしょこしょと弄る。その瞬間牧村は腰を自ら細かくカクカクさせて、犬の様に絶頂した。

「あっ、おっ、ふぅふぅぅうううう♡ あはぁすごいぃぃ何度でもイケちゃう、これ、簡単にイきすぎるよ、ああん♡」

 がくん、と牧村の力が抜けるが武智の下半身はそれを許さない。彼女がイってもイってもずんずんとピストンを繰り返し、彼女の性欲を復活させてしまう。そしてその度に彼女は、自分がイくために最適な腰の動きを学習してしまうのだ。

「よーいスタート!!」

 眼下で笛の音が鳴ると

「あ゛ああああん、だめぇえええ、止まらないぃぃい」

 立ちバックで自ら腰を振り続ける牧村は幸せそうに下半身から汁をまき散らした。だが彼女の高ぶりはまだ治まらない。当然である。結城姉妹は一錠だけだが武智は今回彼女の複数錠飲まされたからだ。

「なー真樹ちゃんよ、ちょっとさーもうちっとエロいことしてもいいと思うんだよね俺たち」
「はぁはぁ……あんた、今さらなにいってんのよ。――これ以上のことなんて」

 不満そうにそういう牧村へ、武智はそっと耳打ちをする。
 とたんに彼女の顔が真っ赤に染まり、そしてあろうことか拳振り上げ――

 ぺたん、と武智の胸に力なくひっついた。
 理由は簡単である。彼女の股間を武智の右手がくちゅくちゅくちゅくちゅと弄んでいるからだ。

「あっ、あっ、あっ。み、光博。こーいうのずるいよ、ほんと卑怯」
「なぁ、頼むよ。今度からこれしてくれたらさ、絶対十回はイかせてやるからさー」

 武智のセリフで股間の音が大きくなる。まるで体が即OKをしたようで牧村は納得がいかない。しかし体の反応は間違っていない、決して間違っていないからこそ彼女は彼のお願いを断れないと確信してしまう。

「ねぇ光博。正直に言って、アンタはそれを私だからしたいの? それとも」

 だからこれは彼女のせめてもの抵抗と意思の確認。当たり前じゃん、おまえだからなんてセフレに似つかわしくない言葉でごまかしてもらえば、まだ受け入れられる。そう考えたことが彼女の最大のミスである。

「そうだよ」
 
 ここまでだったら彼女は快楽と感情に流されていただろう。だがしかし――

「だって、なぁ真樹。お前ならわかってくれるだろ? これをしてくれた後ならお前と中田先輩の仲を、ようやく俺は心から祝福できる気がするんだよ」

 武智光博という男はこう言っている。もしこの行為、尻穴愛撫をしてくれたら――。
 牧村が武智のアナルを舐めて抜いてくれたら、ようやく心の安息を得られると。自分のケツの穴を舐めた舌で仲良く彼氏とちゅっちゅする姿をみれば、とても満足できると。
 身勝手な理由である。
 そんなことのために。
 心の安息や満足という欠片も世の中の為にもならない自己満足のために。
 牧村という少女をモノ扱いさせてくれないかと。

 牧村真樹の失態は、この武智の昏い本心を引き出してしまったことだ。この状況は処女よりも先に尻穴を貫通されてしまった真堂香との状況に至極似ている。彼のこんな本心を引き出さなければ、彼女は見ることが無かったはずだ。

 未だかつて無く強く太く、血流が入り込んだ彼の肉棒の姿を。
 ガッチガッチだなんて生ぬるい。硬さと弾力を備えた熱い棍棒。
 彼の心の奥底に触れたモノだけが目にする、欲望の塊。
 彼と体の関係をもっている女がこんなものを見せつけられたら簡単に想像ができてしまう。そこから生まれるであろう快楽が、まざまざと体を駆け巡り、一度期待をしてしまったらもう終わりだ。喉がなる。体が潤う。瞳に涙が溜まり、嫌でも口が半開きになる。

 流されるなんてとんでもない。もう大方はやる方向でことが進んでしまう。紐のような水着を着せられて眼下に友人達を見ながらするセックスがなんだというのだ。今までのセックスがなんだというのだ。

「なー。まきー、たのむよー」
「い、いや、いやよ」

 口ではそう言うが

「そーそー、はい仰向けー」

 体が促される。

「ね、やめよ、光博、やっぱこんなの」

 仰向けに寝かされた牧村の顔の上に武智がまたがり、

「はーい、まずはおしゃぶりおしゃぶり」
「はむぅ、んぶ、んん、ぅ」

 そのガッチガチどころではないのブツを真上から彼女の口に入れられてしまった。ぶぽ、ぶぶぽ、と唇が下品な音を立てる。それだけで彼女は思い知らされてしまう。この肉棒の期待値を値踏みできてしまう。股間に入れたときの暴れっぷりを想像してしまう。

「ぷはぁ はぁ、はぁ……」

 じっと牧村の顔を観察している武智の表情で、彼女は今自分がどんな顔をしているか想像がついてしまう。武智の口の両端が歪む。それはきっと自分も同じだ。約束された快楽に向けて、彼女は舌なめずりをし、とうとう彼の臀部を顔に受け入れる。

 ぺろり、てろんという細やかな刺激、そしてじゅ、じゅという涎が混じった音に変わる。今また一人の少女と武智の関係性が完了しようとしている。三百六十度捻れきって元の位置に戻ろうとしている。

「ねぇ、光博。上手くできたら、その色々弄って、ね?」

 少女はこういう。この状況で、お尻の穴を上手く気持ちよくできたら、おっぱいや乳首を弄って欲しいと。教育して欲しいと。

「そりゃもちろん」

 武智は頷く。基よりそのつもりだからだ。
 そこからは彼女の学習は早かった。
 顔面騎乗された彼女の口元からじゅばっとかじゅぞぞ、とか親が聞いたら卒倒しそうな音が鳴り響く。音がなる度に彼女の胸は、揉まれ乳首は摘ままれ扱かれて、その合間に

「ふぁぁ、やぁあん♡」

 なんて武智の尻の下で喘いでいる。それなのに彼女の両手ときたら下からにゅっと伸びて肉棒の手コキに暇が無い。しゅこしゅこと硬さと大きさの維持を確かめるその様は、股間に入れるまで決して萎えさえ無い硬い意思すら感じられる有様だ。そして彼女の両手にあった確かな熱い塊が、唐突に消える。だが心配はない、在処はわかっている。彼女の胸の間にすっぽりと武智の肉棒が収まっている。ちゅぱちゅぱじゅっじゅと武智の尻を舐める音はまだやまない

「んむうぅ、んぁぁぁ、はぁはぁ。」

 喘ぎ声の合間も舌先を尖らせて牧村は目の前のアナルを舐めほじる。その間まるで自分の胸が玩具の様に弄ばれているのがわかる。両乳首を片手で摘ままれて、胸を肉棒で擦られたり、思いっきり挟んだまま潰れるぐらい乳を揉みしだかれたり。垂らされた唾液で乳首をぐちゃぐちゃに捏ねられたり、乳の根元をゆっさゆっさ揺らされたり、びたん、びたんと肉棒でおっぱいを圧迫されたり、乳首と亀頭をこしゅこしゅ擦られたり。まるでモノ扱い。輪姦されている時に周りの男からやられそうな悪戯行為。おまけにパシャパシャと聞こえるお馴染みのシャッター音。
 だがその間も牧村が武智の尻を舐めるのをやめないのは武智の肉棒が全く衰えないからだ。約束された快楽に向けて、彼女はもう止まらない。
 武智の手が股間に伸びる。さんざん嬲られた牧村の体はクリトリスを軽く捻るだけでいとも簡単に絶頂を迎えた。彼女の体が大きく痙攣し、流石に武智と体が離れる。

「――はぅぁぁぁ、――はぁはぁ」
「ふー……、ふー……」

 ここまで来たらもはやお互いやることは一つだ。

「このド変態。気持ちよくさせなきゃ承知しないからね」
「まかせろ真樹、多分今日の俺はマジで心底イけそうだわ」

 そして二人は不敵な笑みをお互いに浮かべ。

「あ……あ……♡ ふ、ふとい、ふといふとい♡ これっ、んぁぁぁああああああ♡」

 溜めに溜めた快楽の華が咲き乱れる。

「あー……もう、これダメになっちゃうヤツじゃん♡ おかしくなっちゃうやつじゃんもう♡ ……あーもうどうでもいいやぁ、あっあっあはっあん♡ もっと、ねぇもっとついてっ、あぁああん♡」

 猿のように腰を振る二人のどこかでぎしり、がちゃんという音が聞こえる。武智光博という少年と牧村真樹という少女の関係性が一回転回り切った音だ。これ以上の関係の進展は彼等の間には望めないだろう。武智光博は真堂香と同じく、誰かのモノになった牧村真樹にこの上ないマーキングを付けることに成功したのだ。これから彼女がどういう人生を歩もうが、このマーキングは体からも心からも消えることはないだろう。そして彼女も彼女でもう覚悟がついてしまった。ここまで突っ込んだ行為を流されながらも自ら進んで行ったのだ。これを正当化するには開き直りや思い込みでは対処としては生ぬるい。全面的な肯定と矛盾した関係の甘受。この歪さこそが正常だという全肯定を元に、きっと牧村真樹という少女は生きていくのだ。

 それ故に。

 当事者以外の人間からは欠片もそんな変化は見て取れないだろう。愛しの彼女がまさか違う男のアナルを舐め、胸を弄ばれ、気が狂うような獣の様な性行為をしているなんて絶対に気づかない。だって当人達がそれをダメなことだとは思いつつも、後ろめたい行動だと全く感じていないのだから。この本能を刺激する隠し事は冷静と計画性をもって秘匿されるだろう。もっとも幸い中田浩二と牧村真樹の心の相性は悪くない。このままいけば大学での交際を経て結婚なんてこともあるかも知れない。だがそれでいいと武智は思っている。

 むしろその方がいいと思っている。
 幸せな家庭を気づいているその一端が、俺のアナルを舐めほじった女だという事実がどうしようも無く彼の心根を満たすのだ。
 武智の腰が加速せざるを得ない。

「あっあっあっ、やだぁ、あたままっしろになるぅううう。み、光博むねっちくび、跡が残ってもいいからぁ、おねがい、めちゃくちゃにして、ひぃ、すごい、すごいのくるっ、くるっ♡」

 バックからズンズンされている牧村は上半身は精一杯体を固定するために突っ張り、両腕に力を入れた。そうでないとおっぱいを揉みしだいてもらえないからだ。

「あぁああん♡ きもち、きもちいっ、武智のド変態。ばか、こんなの隠しているなんて、ああん、ふぁぁあん、いいよ、もう出していいよ。――はぁはぁ、わたしがまんできない。もうがまんできない。ね、はやくっ♡ はやく♡ ふぁ、く、くるぅ♡ あっあっあっ――♡」
 牧村の膝が文字通り崩れる。武智の手とチンコだけで支えられているようなだらしのない下半身が突如びくんとつま先立ちにまで回復する。きゅうっと膣内が痙攣し、ごりごりと武智の肉棒を搾り取る蠕動運動が始まり、擦れた分だけお馬鹿になる成分が牧村の頭に分泌された。

「はぁっ♡ はぅぅううう♡ い、い゛っ……くぅ♡」

 その瞬間ついに彼女は腰砕けた。犬の様な後背位からぺたんとそのまま女の子座りに移行し、びゅるびゅるとその膣内から大量の精液と愛液を吐き出した。

「そーら、約束通り今日はあと九回はイかせてやるからな」
「う、うそでしょ。こんな、体もたないよぅ、ひぃん♡」

 だが体とは裏腹に肉棒を何の抵抗もなく彼女の割れ目は受け入れてしまう。
 そして一度ぬぷりと動き出せば――

「あっあっ、やだ、やだぁ♡」

 すっかりその気になった牧村がやだやだいいながら腰を振り出すのだ。
 その様子を武智は満足そうに眺める。
 ああ今日も一つ、少年は心の安寧を手に入れた。
 欲しいものはあと幾つあるかはわからない。
 
「そら、真樹、いくぞ、だすぞ!!」
「んぁぁぁぁ、いくぅ♡ い、いぐぅ♡ んぃいいいいいいい!!」

 だが、きっといつか無くなることを信じて。
 武智光博は今日も歪んだ関係を構築していくのだ。

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