歪曲コミュニケーション

23話 神田佳奈美①


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 神田佳奈美に彼氏ができた。

 そんなニュースが学校中を震撼させたのは、夏休みが終わり最初の登校日となる九月一日のことである。少し早めの修学旅行から、七月末の期末テストを経て、待望の夏休みに突入した生徒らは気の向くままに高校の夏を遊び倒し、受験を控える三年は勉学に励み、その結果カップルになったり、あるものは玉砕したり、そして未来を向くべく夏休みデビューに勤しんだりと忙しい青春を送ったはずである。

 だがそんな些末な件など、このニュースで吹っ飛んでしまった。神田佳奈美に彼氏が出来ること自体珍しいことではない。そもそも入学から現在まで、彼女と突き合った、もといお付き合いした男子生徒は両手の指の数では足りないはずだ。彼女のビッチな振る舞いが暴風から涼やかな風程度に収まったのは、彼女が二年生に進級し、武智光博が入学してきてからだろう。両者納得尽くでの飼い主とペットという関係は彼女の軽すぎる下半身をめっきりとなりを潜めさせることに成功していた。

 修学旅行から夏休みという期間、武智と彼女の距離が若干離れ気味だったこともあるのかもしれない。もしかしたら、牧村真樹、真堂香、大生沢茜、結城姉妹とズコバコと暇が無い武智への当てつけだったかもしれない。飼い主のペット離れここにあり。原因はそんな些細なことかもしれないし、そうではないのかもしれない。

 だがそんなことは重要ではない。既に神田佳奈美は新しい玩具を見つけてしまったのだ。よって事は動き出してしまう。最近なりを潜めていた彼女の悪癖が顔を出してしまう。当然この学校の理事長であり、彼女の実父でもある神田弘蔵にもこの情報は届いてしまう。彼は大きく重い深呼吸をして、スマートフォンのショートカットに指を伸ばした。

『仕事だ』

 たった一言。そのメッセージはSMSというシステムにのって瞬時に宛先のスマートフォンへと着信し、彼の意向を持ち主に伝える。いつもと異なる着信音はその着信が誰から来たものなのかをすぐに持ち主に理解させた。そのスマホの持ち主である武智光博は素早く片手でスマホを操ると、リズムよくタップを行い、返信を済ませた。すると彼の下半身の方から不満げな声が聞こえてくる。

「ちょっとぉ、エッチしてるときにスマホチェックとかさー」
「や、ごめん。でもスポンサー様からの連絡はさ、ほら早めにしないと」

 会話の間も武智は腰を小刻みに動かす。股間からの不満声の持ち主である結城藤子の口は背徳的にも卑猥なピストン運動で黙らせられる。片手はスマホ、片手は彼女の頭。彼は小器用に彼女の口へ挿し入れているものを無造作に出し入れを続ける。無遠慮とまではいかないが、彼女の口を明け渡さなくてはならないピストン運動が、彼女の口を犯し始めた。抗議の視線を彼女は彼へと向けるが、肉棒が口の中を擦り始めるとそれはもう素直なもので、彼女はまるで従順な犬の様にされるがままに口内の自由を明け渡した。にゅっぷにゅっぷと音がする度にまざる咀嚼音が、彼女の口内で舌の奉仕が始まっていることを示している。

「てことは弘蔵さんからー? 私達も手伝う、手伝うー?」

 肉棒で塞いだはずの口と同じトーンと同じ声。くちゅくちゅと口内を犯されて、とろんとなっている藤子の横からひょっこりと顔を出したのは双子の姉妹、というか運命共同体ともいえる結城祥子だ。

「うーん、そだなぁ。今回きついよ? たぶんだけどっ、と」

 ぬぽん、と武智は藤子の口から肉棒を抜き出すとそのまま祥子の顔の前にぶら下げる。ほーらごはんだよ、お咥えなさいなんて、不躾で無礼な行為。だがその隣ではお口を蹂躙された藤子が虚ろな表情で涎を垂らしながらふーふーと肩を上下させている。ただそれだけで、彼女が武智に問いかけていた疑問よりも、口の中を硬いものでごりごりさせる方を選ぶ気になってしまうのが、もはや彼等の人間関係の特色をよく表していると言えよう。

 ふってわいた質問の答えよりも、結城祥子は結城藤子とおなじ目に遭う、いや、同じように扱われることを何よりも望んでいる。そして、それと同じくらいに、彼女は彼女を同じように扱いたい。歪んだ同一性ここにあり、ぶっちゃけてしまえば彼女達は犯りたいし犯られたいし、一緒に犯りたいし、一緒に犯られたい。

 にゅぐにゅぐと音がなり始める。結城祥子の口が藤子に変わって犯され始めた合図だ。彼の腰の突き込みは小刻みで、まるでさっきの藤子の映し鏡。髪の長さが異なるだけで、頭を掴まれているのも同様だ。さっきまで犯されていた藤子が、祥子の口をくちゅくちゅされているところを見守るところまで一緒。傍から見ればこれはもう、なんというか異常の一言である。アダルトビデオや漫画の世界でしかあり得ない関係性。一人の男が双子のお口をとっかえひっかえ。そのくせ女の子側はされるがまま、どころかあまつさえ積極的にしゃぶりにいく。彼女の可愛らしい唇に対して彼のいちもつは中々に大きいものである。当然息苦しくもなるし、辛い行為だ。だが太くて大きい故に舌も、上顎もぐいぐいとこすられる。並の大きさではこうはいかない。出入りする亀頭を鑑みるに、唇で硬さを実感しているだろうし、カリ高な形は彼女の上顎を遠慮無く擦り続けているだろう。口をすぼめればすぼめるほど硬くなり、暴力的な摩擦で涙だって滲んでいる。太いだけでなく長さもあるせいで喉奥までとどいてしまうとかなり苦しいと感じる。彼女がしているお口の奉仕はまるで苦行に近いかも知れない。

 一方そのような激しい行為から解放された藤子は、いまお口ピストン真っ最中の祥子を見て思うのだ。双子姉妹丼に加え3Pで乱交で、その上律儀にも二人とも同じように取り扱ってくれて、こうして今も、祥子のこんな姿を自分に見せてくれている。この男はなんて自分たちのことを理解してくれているのだろうと。玩具の如く扱われる自分と同じ顔のもう一人。彼女達の欲望はこの夏の期間、お互いでは実現できない被虐的な方向へだんだんと進んでいった。

「それでさ~、きついって~?」

 質問の続きは藤子が続ける。祥子は今武智のおちんちんを味わうのに忙しい。息のあった双子ならではの話題の引継方法だ。そんなやり取りも武智は慣れたものである。というのも武智の女友達で夏休み中の交尾回数ランキングを作ればこの双子は圧倒的だ。開き直ってからの彼女たちは行動力の化身である。一年の高村秋継も籠絡まであと少しだそうだ。さらに言えば、彼女たちは独自で理事長である神田弘蔵に今後のことを色々とお願いしたらしい。つまり今の彼女達は武智と同じく神田家の駒なのだ。当然、その先達である武智は教育係に任命され、なんだかんだでセックス漬けの日々である。

「うん、佳奈美先輩に彼氏ができたってさ」

 ちゅっぽん。

 その言葉と同時に、武智の肉棒が祥子の唇から跳ね上がり、彼女の口からこぼれてしまう。当然今の彼の発言は祥子にも聞こえたことを意味していた。この学園に通う生徒なら嫌でも耳に入ってくる戒めめいた論評。

 神田佳奈美とはセックスはしても、つきあうな。
 やけに具体的で退廃的なものであるが、確かな説得力がその噂にはあった。

 野球部の佐竹床旨(さたけとこむね)は退学。
 テニス部の吉岡斉安(よしおかなりやす)は家族揃って遠方へ引っ越し。
 レスリング部の北澤満道(きたざわみつみち)はここ一年間休学中。
 軽音部の井東荘介(いとうそうすけ)は自分探しの旅にでて久しい。
 エトセトラ、エトセトラ、エトセトラ。

 神田佳奈美と正式に交際宣言をした全ての男子が、いまや通学していない。だがその一方で彼女のお遊びの延長上である性行為や一夜限りの関係をもった生徒は今も学園生活を謳歌している。才色兼備、文武両道で誰にでも優しく、誰にでもビッチ。お金持ちのお嬢様のくせにセックスが三度の飯よりも大好きな不思議ガール。当然その整ったフェイスとスタイルのレベルは高次元であり、夜のオカズとしても申し分無い。当然惹かれる男子は数知れず。

 しかしその正体は付き合った男の末路が碌な結末にならない、魔性という言葉では片付けられない事故物件系女子。入居すれば精神的にも肉体的にも碌な結末になることはない。武智が入学し、しばらくペットとして付き従っていたせいでなりを潜めていたが、彼女の悪癖がとうとうこの二学期に発露してしまったのだ。

 神田佳奈美の男性関係の後始末。
 これが武智の本業である。

 父でありこの学校の理事長神田弘蔵が、武智光博という男を雇い囲い込んだ理由の一つであり、彼の生活をスポンサードする条件なのだ。

「あの噂話聞いて佳奈美先輩と付き合おうとする男子なんていたんだ」

 藤子が祥子のお口から飛び出した武智の肉棒をにぎにぎと掴み、彼女の口元へと添えた。ほら、粗相しちゃだめでしょー、なんて親が子供にあやすようなその目の奥で、実は喉奥に精液をぶちまけられる祥子はよ、なんて考えていたりするのかその表情は楽しげだ。

「ちょ、まってまって、流石に私も詳しく知りたいっていうか」

 そう言いながらも、藤子よろしく武智の肉棒をにぎにぎしている祥子も祥子である。

「そもそもその噂自体も知らないんじゃないかにゃん。編入生だし、汰奈橋久道(たなはしひさみち)パイセン。三年の二学期に編入て、なーにしにこの学校にきたんだか。ええとおっさんからの報告書どこだこれ。つーか姉妹ズ、ちんこいつまでもにぎにぎしないの、しゃぶるか、挟むか、挿れるかどれかにせい」
「ぶーぶー、たけちーのけちんぼー」
「そうだそうだー、秋継君はもっと優しいよー?」

 と、悪態をついた後で、結城藤子はぺしりと口を滑らした祥子の頭にチョップをし、祥子は祥子でやってしまったと口を押さえている。高村君、でなく秋継君と言ってしまった点も失言ポイントが高い。

「姉妹ズ、詳しく、それ詳しく」

 こっちの地雷を踏んでしまったと結城姉妹は心の中で後悔をするが、もう遅い。彼女達がガチレズ同一性近親相姦という変態かつ重い女であると共にこの武智光博も碌なものではないのだから。

 結城姉妹と高村秋継の関係性からすれば、別に珍しいことではない。だって彼女達は世間的には彼を取り合う立場であり、高村秋継は美人双子に気に入られたラッキーボーイ爆発しろというところが、表向きの関係性である。別に武智と結城姉妹は付き合っているわけでもない。当然浮気でもないのだ。むしろ高村秋継からみて結城姉妹が武智と体の関係を持っていることを浮気と糾弾する権利は十分にあるだろう。

 だからこそ、この男は碌でもないのだ。犯し尽くした女の子でも、他人の手垢がつけば、すぐに執着がよみがえってしまう。人のモノになってからこそ彼の重い思いが滲み出てきてしまう。僅かながらに垣間見える狂気、結城姉妹は本能的に彼の狂気を直に見てしまう。彼女達と彼が深い体の関係といってもまだ夏休みを共に過ごした程度、彼の狂気を普通のことだと処理するようになっている牧村真樹や、仕方ない一面と諦観するにまで捻れた真堂香のようにはいかないだろう。

「ね、ね、高村君とはどこまでいったのん? 下の名前で呼んでいるってことはそこそこ進んだ?」

 軽い口調におどけた態度。だが目の奥に爛々と宿る狂気の滴。もう今日は散々やりたおしているのに、五回は出している筈なのに。彼女達の目の前には朝からの行為がリセットされたかのような硬さと太さの武智の肉棒がそそり立っている。

「い、いや~、そのなんというかさ~」
「お、おっぱい触らせてあげただけだし、うん」

 はぐらかそうとする藤子と口を滑らす祥子。藤子が祥子にばか、と視線を送るが時遅し。

「……あっ」
「や……っ」

 武智の両手が彼女達のそれぞれの乳房へと伸びている。姉妹の声が静かな吐息と共に肩が窄まる。体が小刻みに震えたせいで柔らかな胸がぶるんと揺れた。

「こんなふうにー?」

 武智の声色は軽いままだ。だが双子は思うだろう、違う、全然違うと。高村には服の上から悪戯程度に触らせただけだ。撫でるように、滑るように。当然下着も付けていたし、そもそも二人一緒なんかじゃない。親指と人差し指で乳首の根元の弾力を値踏みするように摘ままれなんかいないし、硬くなった乳首を中指胸の中にズムズム沈められてぶるんぶるん揺すられるなんてもっての他のはずだ。

「あっ、や、だぁ・・・・・・」
「んっんんっ、あんっ」

 拒絶の言葉とは裏腹に可愛らしい喘ぎ声を出す結城姉妹達。まあ当然であろう。高村は硬くなった乳首を、指先で形を確かめるように撫で回す技術なんて、まだ持っていないし、二人の乳首を片方づつ攻められながら空いている乳首を交互に吸われるなんて甲斐性などまだ彼にはないのだ。

「うあんっ」

 結城姉妹は肩を寄せ合い、同時に声を出してしまう。別に二人がシンクロしているわけでもない。彼女達が視線を下ろしてみれば、武智が単純に藤子の右乳首と祥子の左乳首を頬張っただけである。彼の口の中でお互いの乳首が舌で弄ばれ、一緒くたにこね回される幸せを二人は思わず感じてしまう。部屋に響き渡る下品な咀嚼音も唾液にまみれて硬くなる自分の乳首も器用にも吸われてない方の乳首をまるで玩具の様に自分本位に指先で潰したりひっぱたりする行為だって許してしまう。

 いつのまにか、二人はまるで慈しむかのように彼の頭を両腕で包み込む。当然彼女達には武智に性欲発散のために、いいように体を使われているのも感じている。通常の快楽を共有するセックスとは別に、相手に一方的に何かを強いる独善的な性行為。

 結城姉妹にとってのお互いのレイプ願望。
 武智にとっての所有権の上書き行為。

 彼女達はこう思っている。ああ、今から自分たちの胸は彼のオナニー道具として雑多な扱いを受け、揉まれて吸われて挟まされ、弾かれ突かれなめ回されて、使い捨てのオナホールのような扱いを受けるのだろうと。もちろん抵抗はある。淫乱要素が濃い彼女達だって乱暴に体を使われるのは好きではないのだ。

 だが、その点武智はいつも上手くやってしまう。

「あっ、あっ、あっ……あーっ、ん、んっんっ。はぁはぁ、や、やぁ……」

 もはやどちらがどちらの声かも分からない。二人一緒に、一緒の部屋、一緒の場所、一緒の愛撫。その行為は近親ガチレズ双子の頭に同時に互いが互いの前で、姓処理に利用されてしまうというというシチュエーションを思い浮かべさせる

 ふいに乳首を揉みしだいていた武智の手が無遠慮に二人の股間に突っ込まれた。

「うあっ」
「ああんっ」

 やるせない、仕方ない、そんな言い訳さえも肉欲にとかされて、結城姉妹は、一緒に乳首を味わわれながら、ぬちぬちと股間からだらしない汁を噴き出し始めた。

「う~……っ、あ、それっ、強い、あっ、あぁぁぁ……いく、い、いっちゃ、いっちゃ……ぅ、あっ、あ、あ、あ、あ、あんっ」

 藤子は股間で暴れる武智の指と、休み無く転がされる左乳首からくる断続的な快感に感覚に耐えきれず、足先をピンと伸ばし、彼の指ピストンに合わせてはしたなく膣の中身を震わせた。

「いくっ、いくっ、あぁああんっ、いくよぅ」

 声に合わせて股間からびゅーびゅー愛液が飛び散る。体の力が抜けて、ベッドに倒れるが股間の指はまだ彼女の性器を蹂躙している。

「だめぇ……、だめだよ、たけちー、うっ、あっ」

 くちくちくち、くちくちくちと指の屈伸が、藤子の精神を徐々に溶かしていくのだ。そんな彼女の様子を満足げに横目にみつつ、祥子も何度も絶頂を迎えていた。

 当然武智の手は二本あるので、もう片方の手は祥子の股間に突っ込まれている。藤子と違った点は、そのつっこまている手が彼の利き腕ということであろう。力加減は変わらないが器用さが違う。親指でクリを潰されて撫でられて、その癖一番太い中指と薬指ぐにゅぐにゅと無遠慮に股間をかき回されて、彼女の股下には大きい染みが広がっていた。

「はぁ……はぁ、……うぁ、きもちい、それきもちい……はぁはぁ、あんっ」

 ピストンこそ藤子よりも緩いがの感じる場所が段違いだ。

「うぁぁぁ、またぁ、あっ、でるっ、また出しちゃ……」

 ぬちぬちぬちぬちと、静かでも連続的で、途切れない水音。時々じゅくじゅくと急に股間が潤う度に、祥子はイカされているのであろう。

「うっ、あっ、いく、いくいく……ひんっ、あ、あ~……また、……くるっ、あ゛んっ」

 数回そんなことを繰り返して、彼女も藤子に重なるようにしてベッドに倒れ込んだ。息を切らせて快感の余韻に浸る二人。だが彼女達の視界の隅に入るのは、股間のものをバッキバキに勃たせている武智の姿である。

 だって、二人はまだ胸を揉まれて乳首を吸われてながらイかされただけだ。彼女達も散々体で思い知っている。この男の執着がこの程度で終わるはずがない。

 藤子の体がよいしょ、という武智の呟きと共に起こされる。まるで遠足前の小学生みたいなピュアなテンション。

「ちょっとま――」

 制止する彼女の声ももはやスパイスにしかならない。上体だけ起こさせた彼女にまたがり、武智はびたんと豊満な胸の谷間に肉棒を落とし込むと、無遠慮に両胸を掴み、揉み込み、リズミカルに腰を振り出し始めて――。藤子の眼前で彼女の胸が玩具の様に扱われ始める。いや、これは玩具扱いの方が幾分マシだろう。ふちゅふちゅと彼女の胸の間から水音が漏れ始める。興奮した武智の肉棒は我慢汁を止めどなく出し続け、彼女の胸と谷間を汚していく。

 使われて、犯されて、汚される。

 この行為にはそんな表現がシンプルによく似合う。射精した後始末をつけるティッシュのようなそんな使い捨て感。藤子の気持ちとか、希望とか、都合が及ばない一方的な行為。掴まれ揉まれて摘ままれて、押されて擦られて腰を振られる。きっとやられる側にとっては面白くもない行為。だがしかし、

「んっ……やっ……ぁ」

 彼の無駄に鍛えこまれた体幹と腹筋と足腰が、彼女の胸でそれはもう安定的なピストンを実現してしまう。普通の一般的な高校生ではなし得ない高クオリティのピストン運動。それは彼女の豊満な胸の内側がリズミカルかつ安定的に高速で擦られるということだ。そして彼女のたわわな両胸を絶え間なく揉み続ける彼の逞しい両腕に、こういう行為に関しては経験豊富で気遣い上手な十本の指。

「あんっ、んっ、ああんっ」

 そんなものに弄ばれつつ、興奮しきった武智の暴力的までに充血した肉棒が胸の谷間を擦り上げてくるのだ。やられる藤子としてはどうしても体は気持ちよくなるし、

「ほらほら藤子~、たけちーのお顔みなきゃダメでしょ?」

 なによりそんなことをされている彼女を祥子が放っておくわけがないのだ。祥子に後ろから抱きつかれ、顎を支えられ視線を武智へと促される。当然祥子の空いている手は藤子の股間だ。くちくちくちと、胸とは別に淫靡な音が彼女の股間から漏れ出した。

「はぁぅぅ、ああぅっ」

 当然上のお口もだらしない声が出始める。当然である、気持ちがよいところを弄られれば声はでてしまう。一足す一は二のような常識的な答え。だが――

 刹那そうな藤子の表情、抵抗がある表情に無防備にも半開きの口に突然生臭い塊が飛び込んでくる。

「や、あん……えっ?」

 びゅ。

 まだ胸のピストンは続いている。

 びゅっ、びゅっ、びゅるる、びゅるるる。

 濃くて、臭くて、粘ついた、白濁液。

「え、やだやだ……、やだ、ちょっ――、たけちーまっ――」

 いつも嗅いでいる臭い。いつも口に出されている味なのに、藤子は不意に出されて汚される感覚を覚えてしまい、結城藤子は抗議ために顔を上げてしまう。自分の顔は精子を受け止めるティッシュではないのだ。

 それが、拙かった。

 藤子の横に顔を寄せていた祥子も同様の気持ちだったのだろう。二人とも、同じものを見てしまった。いっそ精液にまみれて目を開けられないほうがよかったのかも知れない。

 そこにあったのものは、

 かつて牧村真樹が体育館裏で後背位で犯されている時にシャッター音に気づき振り返った時のものと同じだ。真堂香が観覧者で尻穴を初めてぬぽぬぽ解されたときに時に見たものと酷似している。大生沢茜は旅行最終日に人気なの無い砂浜で塔田巧と目隠しプレイでいちゃついている時に、きっと自分の股の間から見たはずだ。

 どの女も彼の本性を見たときに、選択を迫られている。これから来るであろう、彼の全身全霊をかけた気持ちのよい性行為に体を明け渡すか、抵抗するかだ。

 藤子が他の男の話をしたら、オナホ代わりにおっぱいをメチャクチャにされて、あまつさえ同意を得ずに二人とも顔にたっぷりとぶっかけられて、生臭い精液で弄ばれました。普通なら彼氏彼女の関係でさえ行為後にぶん殴られてもおかしくない。

「さてと、それじゃ祥子ちゃん、おっぱい出して?」

 しかしこの場合、祥子だって、オナホ代わりにおっぱいをメチャクチャにされて、あまつさえ同意を得ずにいっしょに顔にたっぷりとぶっかけられて、生臭い精液で弄ばれなくてはならない。武智は当然のように、必然のように、まだターンが終わっていないことを姉妹達に告げる。

 姉妹達にとってはそれがたまらない。
 故に、抵抗なんて出来るはずがないのだ。

 ティッシュ扱い、うぇるかむ。
 そんなことを二人とも揃って思ってしまうほど、彼と彼女達の関係は普通ではなかった。




「で、その汰奈橋君とやらははどんな男の子なの~?」

 事後である。
 お風呂に入って体中にぶっかけられた精液を綺麗にして、広めのウォーターベッドでぐだりながら、結城藤子は武智へ語りかけた。祥子の視線も彼に向いているところから、姉妹興味津々なのは間違い無いだろう。

「んん? 姉妹ズ、マジで関わる気? 報告書読んだけど碌なことにならんよ、たぶん」

 武智と言えばごりごりとテーブルでの作業に暇が無い。姉妹の鼻孔へと空調にのってふんわりと漂っていくるのは香ばしいコーヒー豆の匂いである。

「でもさー、気になるんだよねー?」

 次に口を開いたのは祥子の方だ、結城姉妹は最近追々にしてこのようなしゃべり方を武智の前でするようになった、一足す一対一というか二等分対一というか、きっとこれも精神性の変化の一つであろう。コーヒーミルの横に置いてあるドリッパーとカップをみれば3つのカップでは無く、一つと二つ、合計三つで二種類のカップがセットされている。

 武智は彼女達の対応をエロ以外でも既に等分に扱っていた。この三人の関係はそれが今よい方向に働こうとしている。友達からお互いに一歩踏み込み、利益共有性のある人間関係。馴染みで同僚、親友でパートナーみたいなそんな関係である。

「んじゃ、みる? 噂の彼氏、汰奈橋パイセンの資料をさ」

 見るからには手伝ってもらうぞ、という空気を出しながら、武智は豆を挽く手を止めてスマホを操作する。ひゅぽんという電子音と共に、姉妹の端末へ添付ファイル付のメッセージが着信した。

「どれどれ~?」

 慣れた手つきで端末を操作する藤子と祥子。ちなみに細かいことだが片方に送ってそちらをみてなんて野暮なことはしない。きちんと二人に同じものを送っている。

「うっは」
「まじで」

 電気ケトルのお湯が沸くのと、姉妹の感嘆は同時に聞こえた。

「ね、めんどくさそーでしょ」

 とぽとぽとケトルからドリッパーへとお湯を注ぐ武智。ふんわりとコーヒーのよい香りが部屋に充満する。

 汰奈橋久通。
 高校三年生。サッカー部部長経験有り。
 父親は不動産会社経営。
 母親は不動産系投資ファンドの顧問弁護士。

 ここまでなら、お金持ちの男の子なんだろうなー、ああ羨ましい。
 なんてよくある話かもしれない。

 ※注釈
 先月学園の隣地買収の件で揉め事有り。
 神田家が買収を持ちかけていた地主に横やりをいれて相当もめた模様。
 結果的に神田家はこの土地を入手できたが、相当の遺恨が出た。

「ぜぇったい嫌がらせの類いだよ!!」

 骨肉の買収劇が終わった後に、態々息子と娘がつきあい始めました。そんな話が自然発生するわけがないのだ。

「これさー、転入手続きの時点で止められなかったの? 弘蔵さん理事長でしょ、さすがに――、って、まさか」

 呟いていた時点で結城藤子ははっと思い当たる。

「そうだ。俺達がよーく見知っている愛に狂ったら見境が無い、ハイパー電子戦が大得意な高校三年生がいるじゃろ?」

 ずずず、適温になろうとするコーヒーをすすりながら武智は遠い目をしながら呟いた。

「佳奈美先輩は、今回敵側だ」

 あー、この豆やっぱおいしーなー、キロ単位で買っちゃおうかなーとかぶつぶつ言いながら虚空を見つめる武智。

「知ったからには最後まで付き合ってもらうぞー? 姉妹ズ」
「うぺぇぇぇ……」

 腹の底からめんどくせぇ、そんな表情をしながらカフェインを含んだ吐息を吐き出す結城姉妹の怨嗟のため息を聞きながら、それでも武智は解決までのプランを練るのであった。

 だってまあ、コレが彼の本業なのだから。
 撤退は無い。
 退散も無い。
 だって、もうこれは都合何回目かも分からない。

 何より、


 この。


 仕事は。


 めんどくさくあっても、決して。


 決して、武智は嫌いなわけではないのだから――。

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